この冬の節電要請に電力会社が動き出した。関西電力は2011年10月14日に、2府5県が参加する関西広域連合との協議でこの冬の電力の需給需要の見通しを説明。「節電」を要請する考えを明らかにした。原子力発電が全体の約4割を占める関電にとって、稼働停止中の原発の運転再開が難しいことが事態を深刻にしている。
東京電力や東北電力なども、今夏のような強制力を伴う電力使用制限令の適用を回避するため、企業や家庭に節電協力を呼びかけていく。
今夏を反省「早め」の対応
関電は、11基ある原発のうち現在4基が稼働中だが、12月下旬までに3基が停止。このため12月第4週以降の電力供給は、発電所の事故などに備えた予備率3%を含めて8.7%不足すると説明。すべての原発が停止する2012年2月末には最大11.9%の供給不足になると予測した。
八木誠社長は、今夏は節電要請が遅れたうえ、政府や関西広域連合と関電のあいだで目標数値が異なったことで企業や家庭が混乱したため、「早めに対応したい」という。 関西経済連合会の会長でもある関電の森詳介会長も、「この冬の節電は原発の再稼働がなければ夏以上に厳しい」と述べ、企業の生産調整に踏み込んだ節電を要請する可能性を示唆している。
資源エネルギー庁がまとめた今夏の節電実績によると、企業などは政府の数値目標をほぼ達成した一方で、一般家庭の取り組みは地域差があった。削減目標が15%の東北電力管内では工場などの大口需要家と家庭が各18%だったが、10%以上(6月10日以降に15%に引き上げた)を目標とした関電管内は大口需要家が9%だったのに対し、家庭は4%にとどまった。
また、関西社会経済研究所の調べでは、関電管内の今夏の節電(抑制)率は3.8%しかなかった。東京電力管内は17.2%、全国平均は9.9%で、同研究所は「関電管内の節電は十分とは言えない」と指摘した。
原発再稼働しないと「無理」?
四国電力は2012年1月に電力供給の4割をまかなう原発がすべて停止する見通しで、電力の安定供給は他社からの電力融通しだい。中部電力も浜岡原発の停止が影響し、需要に対する供給余力を示す予備率が7%前後となり、適正水準の8~10%を下回った。企業や家庭に対して、「支障のない範囲」で節電協力を要請する。
東北電力は東日本大震災と新潟・福島豪雨で発電所が相次ぎ停止。復旧作業を急いでいるが、この冬は暖房向けと復興の本格化が電力需要を押し上げるとみられ、夏に続いて冬も節電を要請する。夏は北海道電力からの電力融通もあったが、その北海道電力は冬場に電力使用のピークを迎えるため、過度な期待はできない。
東京電力は現在、今冬の需給見通しを精査中。「電力は昨冬の最大需要4415万キロワットを上回って確保できる見通し」だが、柏崎刈羽原発を含め現在稼働している発電所が停止しないことが前提だ。「急激な気温の低下などに備えるためにも、この冬も無理のない範囲の節電をお願いしたい」と話している。
ただ、冬の電力需要のピークは、夏と違って気温の低い朝と家庭の暖房使用が増える夕方以降になることが多い。ラッシュ時と重なるため通勤電車の間引き運転は市民生活に大きな影響を与えかねないし、工場などもサマータイムのような操業シフトは敷きにくい。
家庭やオフィスの暖房や照明など、比較的簡単に取り組める節電効果に期待するしかなく、節電に「決め手」がないようだ。