NHKでは暴力団排除条例の施行を受け、年末の「紅白歌合戦」では出場者の選別に厳しい姿勢で臨むことにしている。暴力団との関係が何度もウワサされている演歌勢には逆風が吹く、というのが各メディアの共通した見方だ。中には、演歌歌手は8割減――そんな「予想出場歌手リスト」を掲げる週刊誌まで現れた。果たしてどうなるのか。
「小・中学生なら黒い交際を心配する必要もない」
NHKの松本正之会長は2011年10月6日の記者会見で、暴力団と関わりのある歌手については紅白に出場させない方針を打ち出した。スポーツ紙や週刊誌では出られなくなるのは誰か、その穴を埋めるのは誰か、といった推測が盛んに掲載されている。
たとえば「FRIDAY」(10月28日号)。出場候補者70組について、暴力団交際の有無などをまとめた「NHKプロデューサーが作成したメモ」という触れ込みのリストを公開した。また落選組に代わる「目玉」として、長渕剛さんやレディー・ガガさん、果ては「初音ミク」の名前を挙げるメディアもある。
そんな中、週刊ポストは、2011年10月17日発売号で、出場者全46組、登場順まで予想した「出場歌手リスト」を掲載した。
これによれば演歌勢は出場47回を数える北島三郎さんを筆頭に、ほとんどの有名どころが「落選」。残るのは「天才演歌少女」さくらまやさんやジェロさんなどわずか5組で、前回の13組から半分以下になる。浜崎あゆみさん、エグザイルといったスターも含め、前回出場44組のうち30組が一気に姿を消す。
穴を埋めるのが、「マルモのおきて」の芦田愛菜さんら「子ども」たち。「小・中学生なら黒い交際を心配する必要もない」という読みだ。AKB48、ハロー!プロジェクトなどのアイドル勢も躍進し、特にジャニーズからは5組が出場と踏む。
年配者向けには吉田拓郎さんらフォーク勢を起用し、海外からは少女時代、KARAなどの韓流組、レディー・ガガさんが出演。「目玉」となるのは、10年ぶりに出場する松田聖子さん……これがポストが予想する11年の「紅白歌合戦」だ。
ジャニーズオンパレードなら視聴率は30%台?
しかし芸能評論家の肥留間正明氏は、「演歌歌手8割減」というポストの予想に否定的だ。
「そもそも演歌界に限らず、今でも芸能界では地方興行に暴力団が付き物です。演歌の8割がダメなら、出場者全体の8割がダメ。大丈夫なのはレディー・ガガぐらいです」
その上で「北島三郎、鳥羽一郎のように関係が深いとされる歌手は難しいかもしれないが森進一、五木ひろし、千昌夫、新沼謙治ら、残すべき人は残すでしょう」と予測する。また「ジャニーズのオンパレードで穴埋めをするようでは、視聴率はさらに下がって30%台半ばになってしまう」と見る。
その上で肥留間氏は、今年の紅白が歌手にとって「踏み絵」になることを懸念する。
「今年の紅白に落とされた歌手は暴力団との交際を『認定』されることになる。多くは興行上知らず知らずのうちに接触しているだけなのに、みんなが島田紳助らと同類に見られてしまう。11月頃からは『辞退』を申し出る歌手も続出するでしょうが、それくらいならいっそ『紅白』を一回ぶち壊してしまったほうがいい。このような顔ぶれでは視聴者は納得しません」