「モラルの高い会社」を目指していた
一方の仕事ぶりについては、「謙虚で仕事熱心」との評も多い。前出の「カジノ遊び」を報じた週刊誌の多くが、「遅くまで飲んでいても、朝は定時に出社して業務をこなしていた」といったエピソードを紹介している。また、仁義を重んじる人物でもあったとようだ。
「財界」07年新年特大号に掲載された副社長時代のインタビューでは、父親で最高顧問の井川高雄氏について、
「印象に残っている言葉は『ビジネスの世界で奇麗事を言っても、最後は人間の好き嫌いであったり、俺が30度頭を下げたのに、お前は20度しか下げなかったとか、そういうものが案外残るんだぞ』ということですね」
と振り返っている。また、06年に業界トップの王子製紙が業界5位の北越製紙に敵対的株式公開買い付け(TOB)を仕掛けたことに反発。TOBは失敗に終わったものの、日本製紙連合会の鈴木章一郎会長(王子製紙会長)に辞任を要求したこともある。その理由を、前出のインタビューでは
「町一番の大地主さんが、町内会長をなさっている。ところがそんなに広くはないが駅前のとても良い立地のビルを欲しくなって同じ町内会の持ち主さんに売ってくれと言われたが断られた。ならばと、不動産屋と組んで強引に地上げをしかけて失敗した。それでも『町内会長は続ける』というような話じゃないですか?」
と説明している。
社長就任直後の「経済界」07年8月21日号では、
「末端に至るまで、本当の意味でモラルの高い会社にしていかなければならない。言われたことをしていれば間違いない、悪く言えば言われたことをしていればいいんだという風潮がある」
とモラルを重んじる発言もしている。
なお、今回の事件をめぐっては、東京地検特捜部が大王製紙から任意で資料の提出を受け、会社法違反(特別背任)容疑で捜査を進めている。