タイの大洪水、「想定外」の大雨で被害拡大 防災対策はどうなっていたのか

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   タイの大洪水の被害が深刻化している。各地の工業団地が浸水し、日系企業400社超も影響を受けている。タイの洪水被害区域は、日本の本州の広さに匹敵する範囲に及んでいるとの報道もある。なぜここまで拡大したのだろうか。

   2011年10月17日には、首都バンコクから北約50キロにあるナワナコン工業団地の敷地内が浸水した。近くの堤防の一部が決壊したことなどによる。同団地には100社以上の日系企業の工場がある。

バンコク周辺は平坦な土地広がる

   洪水被害はタイだけでなく、ベトナムやカンボジアなどインドシナ半島各国で起きた。7月以降、大雨が続き、タイでは死者が300人を超え、カンボジアでも100人以上が死亡している。

   8月から10月にかけては例年、雨が多く、タイでも洪水自体は珍しくないが、今回のような大洪水は1955年以来だとしてタイ政府は警戒を呼びかけている。

   タイを南北に流れるチャオプラヤ川流域の被害が激しく、最下流域にあたるバンコクにも洪水が北方から迫り、タイ当局は水を周辺に逃がしてバンコク方面へ入れない対策を取るなど首都防衛に追われている。

   当初、チャオプラヤ川上流で水があふれたためダムを放流したことも、下流域の被害拡大につながったとの指摘も出ている。

   タイは一般的に北部は山岳地帯、バンコクなどがある中央部はチャオプラヤ川が形成したデルタ地帯として知られる。デルタ地帯では、標高の低い平坦な土地が広がっている。今回の洪水は、北部から中央部、東部と広域にわたっている。

下水道施設の未発達も一因か

   タイの洪水対策は、どの程度なされていたのだろうか。

   タイのコンサルティング会社と提携している朝日ビジネスソリューション(岡山市)のタイ進出サポート担当、岩倉弘貴氏によると、首都バンコク以外の場所の洪水防止策(堤防設置など)への投資は、タイ政府は熱心ではなかったという。

   また、下水道施設も日本ほど発達しておらず、高低差が少ない低地で水はけが悪い状況を一層悪化させている、とも指摘した。

   バンコクは別だが、農村地帯などでの洪水は例年珍しくない。今回は例年より30%多い雨量だと指摘されており、大洪水につながった。

   洪水が引いた後、仮に全国的に洪水対策を実施するとしても、かなりの時間と費用がかかりそうだ。「50年に1度」ともいわれる今回の大洪水の後、タイ政府が再発防止策にどの程度を力を入れるかは不透明だ。

   多くの日系企業にとって「想定外」の非常事態となった今回の大洪水。操業停止に追い込まれている工場も増えているが、岩倉氏は、影響が長期化する懸念があるものの、タイの人件費や関税の安さ、さらにインフラの充実度、周辺東南アジア諸国へのアクセスの良さといった、企業にとっての「タイの魅力」は変わらないと分析する。大洪水後も、日系企業が一斉にタイから撤退する事態には発展しないのではないか、とみている。

   現地報道などによると、タイ当局者の話として10月17日段階で「チャオプラヤ川の増水は止まった」「満潮期は過ぎた」との楽観論が伝えられる一方、バンコク方面へ洪水はじわじわ拡大中だの見立ても流れ、まだ情報が錯綜している模様だ。

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