下水道施設の未発達も一因か
タイの洪水対策は、どの程度なされていたのだろうか。
タイのコンサルティング会社と提携している朝日ビジネスソリューション(岡山市)のタイ進出サポート担当、岩倉弘貴氏によると、首都バンコク以外の場所の洪水防止策(堤防設置など)への投資は、タイ政府は熱心ではなかったという。
また、下水道施設も日本ほど発達しておらず、高低差が少ない低地で水はけが悪い状況を一層悪化させている、とも指摘した。
バンコクは別だが、農村地帯などでの洪水は例年珍しくない。今回は例年より30%多い雨量だと指摘されており、大洪水につながった。
洪水が引いた後、仮に全国的に洪水対策を実施するとしても、かなりの時間と費用がかかりそうだ。「50年に1度」ともいわれる今回の大洪水の後、タイ政府が再発防止策にどの程度を力を入れるかは不透明だ。
多くの日系企業にとって「想定外」の非常事態となった今回の大洪水。操業停止に追い込まれている工場も増えているが、岩倉氏は、影響が長期化する懸念があるものの、タイの人件費や関税の安さ、さらにインフラの充実度、周辺東南アジア諸国へのアクセスの良さといった、企業にとっての「タイの魅力」は変わらないと分析する。大洪水後も、日系企業が一斉にタイから撤退する事態には発展しないのではないか、とみている。
現地報道などによると、タイ当局者の話として10月17日段階で「チャオプラヤ川の増水は止まった」「満潮期は過ぎた」との楽観論が伝えられる一方、バンコク方面へ洪水はじわじわ拡大中だの見立ても流れ、まだ情報が錯綜している模様だ。