光学機器メーカーのオリンパスの社長を解任されたマイケル・ウッドフォード氏がその理由について、同社が過去に実施した買収に不適切な行為がなかったかどうかを調査したことではないかと、英紙フィナンシャル・タイムズのインタビューで語っていたことがわかった。
オリンパスは2011年10月14日に開いた臨時取締役会で、同氏の解任を全員一致で決めた。インタビューのなかで、ウッドフォード氏は同日の取締役会での発言も許されなかった、としている。
前社長の社内調査の有無「わからない」
英紙フィナンシャル・タイムズなどが報じたところでは、ウッドフォード前社長はオリンパスが2008年に実施した英医療機器メーカーのジャイラス社の買収やそれ以前の買収案件について、「ファイナンシャル・アドバイザーなどに過大な支払いをした可能性がある」と話した。
月刊誌「FACTA」は2011年8月号と10月号の2度にわたり記事を掲載。無謀なM&Aが巨額損失を生み、社内の不安定要素になっていると指摘していた。一連のM&Aに早くから「疑惑の目」を向けていた「FACTA」の編集主幹、阿部重夫氏は「きちんとソースをもってやっていることで、今後についても追って(報道して)いきます」と話している。オリンパスに質問状を投げているが、「事実上のノーコメント」を続けているという。
FTなどの報道によると、ウッドフォード前社長は「不適切な行為が行われたことを確信することはできないが、現段階では排除することもできない」とも指摘し、解職直前には書簡で菊川会長に「(買収をめぐる)誤まった判断で株主価値が損なわれたと伝えた」とも話している模様だ。
オリンパスは10月17日、ウッドフォード前社長の解任理由を改めて発表。「他の経営陣との乖離が原因」とコメントした。また、同氏が社長就任後に社内調査を行っていたかについて、同社広報は「その有無を含め、わからない」という。
「過去の買収の資金は適切に会計処理している」
FTが報道したウッドフォード前社長の主張についても、「過去の買収の資金は適切に会計処理している」とコメントしている。
オリンパスは、2015年3月期には医療事業の売上高を5500億円(11年3月期は3553億円)にすることを目指している。そのために、医療事業や産業用検査機器のM&Aに積極的で、ジャイラス社の買収はその足がかりとなった案件。オリンパスはこの買収に、同社としては過去最高の約2600億円を投じた。
そのため、「実態よりも高い価格で買収されたのでは」との見方が広がった。買収後に一時株価が下落したこともあった。
買収疑惑の真相は不明だが、先の内部告発社員の配置転換をめぐる裁判や、今回の突然の社長解任劇をみると、同社の体質に何か問題があると思われても仕方がないかもしれない。