「復興のためなら増税もやむなし」といった空気に変化が出始めた。自分たちの給料(歳費)を満額に戻す国会議員の姿勢もあってか、「増税の前提として、国会議員や公務員の数や給料を減らすべきだ」という声が強まりつつある。
朝日新聞が2011年10月17日付朝刊で報じた世論調査結果によると、復興財源のために所得税などを増税する案について、反対は49%と賛成40%を上回った。
「国会議員の人数・報酬削減が前提」91%
朝日調査だけでなく、読売新聞(10月10日付朝刊)の世論調査でも、復興増税案に対し、反対が55%、賛成38%と反対派が上回っている。
一方、8月末の民主党代表選直前に朝日新聞が行った世論調査では、復興財源のための増税について、賛成51%、反対37%と賛成の方が上回っていた。
わずか2か月弱で賛否が逆転した形で、「復興のためなら増税もやむなし」という空気に変化が出始めたことがうかがえる。
その理由として浮かんでいるのは、国会議員や国家公務員の人数、給料の削減が一向に進展していないことへの苛立ちだ。
10月17日の朝日調査記事によると、「増税をするならその前提として、国会議員の人数や報酬を減らすべきだ」という意見に賛成の人が91%にも及んだ。
また、同じく増税の前提として、「国家公務員の人件費を大幅に減らすべきだ」という意見に対しても、賛成が75%と反対17%を大きく上回った。まずは国会議員と国家公務員が身を削ってからでないと増税には納得できない、というわけだ。
「各党全部が(削減に)賛成しないと進まない」
民主党は一応、「衆院選比例で80削減」などの改革案をまとめてはいる。前原誠司・政調会長が「残り2年で(議員定数削減を)必ずやり遂げなくてはならない」(9月20日)と会見で述べるなど、「かけ声」だけは上がっている。
しかし、輿石東・幹事長は「各党全部が(削減に)賛成しないと進まない」(10月6日)と早くも腰が引けた姿勢を示している。
国家公務員の給与引き下げについても、平均7.8%減にする法案は提出しているが、成立の見通しは立っていない。しかも、民主党がマニフェスト(09年衆院選)で掲げた「国家公務員の総人件費2割削減」との開きは依然大きいままだ。
民主党の「かけ声」の本気度を疑わせる出来事もあった。東日本大震災を受け、少しでも財源に回そうと4月から行っていた国会議員の「給与月50万円カット」が9月末で終了し、延長を行わなかったのだ。
みんなの党が「延長」の意味も込め再提出した「給与3割(約39万円)、ボーナス5割カット」法案も無視した形だ。
もっとも、復興増税に関する今回の朝日世論調査と8月末の調査とでは、質問の表現に違いがある。8月末では、単に「復興財源としての増税」となっていたが、今回調査では政府方針を受け、「所得税や法人税を中心とする増税」という具体的な表現に変わっている。
多くの人に身近な「所得税」などが明示されたため、拒否反応が出た可能性はある。実際、今回調査でも、「復興のためのたばこ税増税」については、賛成が63%と反対29%を大きく上回っている。
野田首相「議員定数削減」先送りの腹づもり?
ちなみに、「復興増税とは別に」消費税を社会保障の財源として2010年代なかばまでに10%に引き上げることについては、賛成45%(8月末は44%)、反対46%(同45%)と拮抗している。
いずれにせよ、9割超の人が、(復興や社会保障の財源を問わず)増税の前提として「国会議員の人数や報酬を減らすべきだ」と答えていることの重みは変わらない。
野田首相は10月17日、内閣記者会とのインタビューで、衆院の定数削減について「各党の意見に真剣に耳を傾けていくことが基本姿勢だ」と述べた。
日経新聞(電子版)は、この野田首相発言について「衆院比例代表定数の80削減などは先送りする考えを示唆した」と分析している。野田首相はすでに腰砕け状態なのだろうか。