「復興増税」は11.2兆円か9.2兆円か 前原氏と政府・財務省がバトル

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   東日本大震災の復興財源を賄う増税案を巡る政府と民主党のゴタゴタで、発足から1カ月を迎えた野田佳彦政権の意思決定に、不安が広がっている。

   2011年度第3次補正予算案に関する自民、公明両党との3党協議も始まったが、政府・与党の足並みの乱れが協議に悪影響を与えない。

大増税への反発が強い民主党

   関係者の話を総合すると、今回のドタバタ劇の経緯は次のとおりだ。

   野田首相の指示で、9月中旬には増税で賄う財源は「11.2兆円」が既定路線になった。この時点の税外収入は5兆円。だが、民主党内の増税への反発が強いことから、前原誠司政調会長を中心に、政府保有株の売却など税外収入の上積みの主張が強まった。新たな政府・与党の意思決定機関である政府・民主三役会議が9月25日に開かれ、前原氏が税外収入上積みを主張。安住淳財務相は渋ったが、26日の前原・安住極秘会談で税外収入を2兆円上積みして7兆円することが固まり、27日の三役会議でも税外収入7兆円を決めた。

   ところが28日に五十嵐文彦副財務相が「(11.2兆円の)枠組みは変わらない」と発言。藤村修官房長官ら政府側は増税法案に書き込む総額は11.2兆円で意思統一した。税外収入の上積み2兆円の柱であるJT株の全株売却に自民党が反対、エネルギー資源開発関連株売却も具体的な検討はほとんどされていないなど、「現実的には2兆円は困難」(財務省筋)との判断から、増税法案に書き込む総額は「11.2兆円」とし、2兆円を実質的に「努力目標」扱いにするということだ。

   これに収まらないのが前原氏だ。「(復興)増税額は9.2兆円。誰かが巻き返そうとしても巻き返せない」(30日のTBS番組収録)と語気を強めるなど、「9.2兆円」へのこだわりを繰り返している。

   前原氏の強引さが目立つ形だが、その評価は割れている。前原氏が9.2兆円にこだわるのは、ねじれ国会での3党協議で増税に慎重な自公両党に協力を求めることになり、一定の譲歩は避けられないから、交渉の当事者である自分が政策決定の強い影響力を自公両党に誇示する必要がある、というわけだ。27日ごろからの財務省の巻き返しは相当なものだったと言い、これへの憤りも「極めて強い」(与党関係者)という。

過去にも根回しなしの強引な手法

   一方、今回の一連の動きを「根回し、事前調整なく、不用意な発言や行動に走り、収まりがつかなくなる悪い癖が出た」との批判も強い。鳩山政権成立直後、国土交通相に就任していきなり、地元との調整もなく八ッ場ダム中止を宣言。JAL破綻の際には、親しい関係者を中心に構成した「タスクフォース」に再建計画を練らせようと独走した挙句、タスクフォースは解散、「1カ月を無駄に空費し、経営悪化を加速させた」(JAL関係者)。さらに、尖閣列島近海の中国漁船事件では、船長の逮捕を主導しながら、途中からは釈放に転換した――など、これまでも批判されることがあった。マスコミでも「『言うだけ番長』という不名誉な称号は不動のものとなりかねない」(9月30日「産経新聞」)と、今回の動きを揶揄する報道もある。

   もちろん、前原氏が10月4日に、円高を活用した資源確保や海外企業の買収などを積極的に進めるよう、野田首相に申し入れたことをとりあげ、元外務省主任分析官の佐藤優氏が前原氏を高く評価する(7日「東京新聞」)という報道もある。

   いずれにせよ、これからの3次補正や復興増税をめぐる与野党折衝は、野田政権の動向はもちろん、国民的人気の高い政治家・前原氏の将来を占うポイントにもなりそうだ。

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