マツダが世界で唯一実用化し、40年余にわたって生産を続けてきたロータリーエンジン(RE)搭載車が、2012年6月で姿を消すことになり、モーターファンの間に波紋を広げている。現行モデルとして唯一残っていたスポーツカー「RX-8」の販売が低迷し、新たな環境・安全規制などに対応するのが困難になったためだ。
後継モデルの情報はなく、世界市場からロータリーエンジンが永久に消える可能性が高い、との見方が強い。ただ、新たなロータリーエンジン搭載車についてマツダは「鋭意、研究開発を続けているところで、期待していてほしい」と話し、再チャレンジに含みを持たせている。
振動も音も少なく、滑らかに加速する
2011年はロータリーエンジンを搭載したレーシングカー「マツダ787Bが仏ルマン24時間レースで優勝して20周年となる記念すべき年で、ルマン・サルトサーキットや国内各地で787Bのデモンストレーション走行が行われた。多くのマスコミが取り上げ、マツダとロータリーエンジンの双方に関心が集まっていただけに、ファンのショックは大きい。
ロータリーエンジンは1960年代にマツダが社運をかけて旧西ドイツのメーカーの特許を取得し、1967年発売の「コスモスポーツ」で実用化した。ロータリーエンジンは、繭のようなハウジングの中で、おにぎり型のローターが回転することで動力を発生する。
同じガソリンエンジンでも、通常のレシプロエンジンはピストンの往復運動を、クランクシャフトを介して回転運動に変えるが、ロータリーは最初から回転運動で動力を発生するため、スムーズかつパワフルで、レシプロエンジンに比べて小型化できるなどメリットが多いとされた。
事実、ロータリーエンジンのRX‐8で高速道路を走ると、レシプロエンジンとの違いは明確だ。アクセルを踏み込み、追い越し車線で5000回転くらい回しても、良くできたレシプロエンジンの3000回転くらいの感覚でしかない。振動も音も少なく、滑らかに加速するからだ。エンジンの回転を上げて走る時の気持ちよさ、上質さはロータリーならではの持ち味だ。姿を消すことになれば、孤高の存在だった高性能エンジンを惜しむ声が強まるのは必至だ。