スマートフォン「ながら歩き」は危険 高齢者や子ども、視覚障害者が被害

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   多機能携帯電話(スマートフォン)の急速な普及に伴い、利用者が歩きながら端末の画面を閲覧していて通行人とぶつかるトラブルが増加しているようだ。

   「被害者」となるのは高齢者や子ども、視覚障害者が多い。大きな事故につながる恐れが指摘されている。

ホーム上で列車と接触、線路への転落事故が増加

画面に夢中で周りが見えなくなる(写真はイメージ)
画面に夢中で周りが見えなくなる(写真はイメージ)

   鉄道の駅での待ち時間や移動中の電車の中で、スマートフォンを使って情報収集やメールの送受信、SNSを楽しむ人が増えている。携帯電話メーカーは、主力商品の軸足をスマートフォンへと移し、通信事業者も米アップルの「アイフォーン(iPhone)」や米グーグルが開発した基本ソフト「アンドロイド」を搭載した機種を続々と売り出している。

   スマートフォンの所有率が上がるにつれて、課題も浮き彫りになってきた。特に「ながら歩き」が問題化している。従来型の携帯電話に比べて使い方が広がり、小型のパソコンのような機能を持つスマートフォンの場合、利用者は画面を食い入るように見る傾向が強く、周りに気づかなくなる危険性が高まる。

   内閣府の「交通安全白書」によると、駅のホーム上で列車と接触したり、ホームから転落したりして発生する死傷事故は年々増加傾向にある。このうち、スマートフォンの「ながら歩き」がどれほどを占めるかは分からないが、東京や大阪では以前、携帯電話の使用中にホームから線路に転落した事例もあるため、スマートフォンでも同様の事故が発生する恐れは十分にある。

   2011年10月14日放送の情報番組では、スマートフォンを見ながら歩く人の様子が映し出された。駅のホームの端ギリギリを通るサラリーマンや、乳母車を引く母親とぶつかりそうになる若者と「あわや」の連続。被害を受けるのは高齢者や、背丈が小さく視界に入りにくい子ども、さらには視覚障害者が多い。

   従来型の携帯電話の普及時にも、使用しながらの歩行や運転が問題視された。特に自動車や原付の運転中の使用については2004年の道路交通法改正で、電話機を手に持っての通話や画面を注視していた場合に厳しい罰則規定が設けられている。

「杖の音」聞いてもよけてくれない

   実際に駅やホームで、スマートフォンの「ながら歩き」をめぐるトラブルは増えているのか。JR東日本の広報に取材すると、「スマートフォンが原因でのトラブル件数という統計はとっていない」という。乗客同士がもめて駅員が割って入るようなケース自体、それほど多くないそうだ。

   ただし最近、スマートフォンの問題がニュースで取り上げられることが多いため、駅の利用者に向けて「ながら歩き」に関して注意を喚起していると説明する。スマートフォンの画面閲覧だけでなく、読書や携帯ゲーム機の使用、ヘッドホンをして音楽を聴きながら歩いている人を対象に、ポスターや一部電車の車両に取り付けられたモニターで安全な歩行を呼びかけている。

   被害を多く受けている側は、どう感じているだろうか。東京視覚障害者協会事務局の織田洋さんは、目の不自由な人に対して通行人がぶつかってくるケースは増えていると話す。相手と接触して初めて気がつくため「相手がスマートフォンを使っているかどうかまでは分かりません」と言うが、織田さん自身も「駅で誰かが当たってきて、『ごめんなさい』と謝られたことがありました」。

   織田さんは、ホームでは点字ブロックを頼りにして歩く。そこからずれると線路に落ちる危険が増すからだ。「以前は杖の音を聞いてよけてくれた人が多かったのですが、最近は、なかなかそうはいきません」とため息をつく。「ながら歩き」を減らすには、「モラルの問題であり、社会全体で解決の方向に持っていってほしい」と願う。

   路上でも人同士がぶつかればケガをする恐れがあるが、駅のホームとなれば線路に転落といった命にかかわる事態になりかねない。鉄道会社では現在、安全性に配慮して可動式の柵の取り付けを進めているが、短期間にすべての駅で作業を終えるのは不可能だ。織田さんは「(スマートフォンを見ながら歩く人を)注意する駅員を増やすような対策をとらないと、解決は難しいのではないか」と指摘する。

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