スマートフォン「ながら歩き」は危険 高齢者や子ども、視覚障害者が被害

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「杖の音」聞いてもよけてくれない

   実際に駅やホームで、スマートフォンの「ながら歩き」をめぐるトラブルは増えているのか。JR東日本の広報に取材すると、「スマートフォンが原因でのトラブル件数という統計はとっていない」という。乗客同士がもめて駅員が割って入るようなケース自体、それほど多くないそうだ。

   ただし最近、スマートフォンの問題がニュースで取り上げられることが多いため、駅の利用者に向けて「ながら歩き」に関して注意を喚起していると説明する。スマートフォンの画面閲覧だけでなく、読書や携帯ゲーム機の使用、ヘッドホンをして音楽を聴きながら歩いている人を対象に、ポスターや一部電車の車両に取り付けられたモニターで安全な歩行を呼びかけている。

   被害を多く受けている側は、どう感じているだろうか。東京視覚障害者協会事務局の織田洋さんは、目の不自由な人に対して通行人がぶつかってくるケースは増えていると話す。相手と接触して初めて気がつくため「相手がスマートフォンを使っているかどうかまでは分かりません」と言うが、織田さん自身も「駅で誰かが当たってきて、『ごめんなさい』と謝られたことがありました」。

   織田さんは、ホームでは点字ブロックを頼りにして歩く。そこからずれると線路に落ちる危険が増すからだ。「以前は杖の音を聞いてよけてくれた人が多かったのですが、最近は、なかなかそうはいきません」とため息をつく。「ながら歩き」を減らすには、「モラルの問題であり、社会全体で解決の方向に持っていってほしい」と願う。

   路上でも人同士がぶつかればケガをする恐れがあるが、駅のホームとなれば線路に転落といった命にかかわる事態になりかねない。鉄道会社では現在、安全性に配慮して可動式の柵の取り付けを進めているが、短期間にすべての駅で作業を終えるのは不可能だ。織田さんは「(スマートフォンを見ながら歩く人を)注意する駅員を増やすような対策をとらないと、解決は難しいのではないか」と指摘する。

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