九州電力による「やらせメール」に古川康・佐賀県知事からの要請はあったのか――「あった」とする第3者委員会と、「なかった」とする九電との見解の対立が、最終局面になっても続いている。
九電は2011年10月14日にも、九電設置の第3者委が9月末に九電へ出した報告書をもとに、経済産業省へ最終報告書を提出する予定だ。肝心の知事要請をめぐっては、九電は同委の「要請はあった」との見解を否定する方向という。
委員長「経営者の暴走」
第3者委で委員長を務めた郷原信郎弁護士は10月12日、自身のメールマガジンで「第3者委の指摘と異なる調査結果を(国に)報告するのは、現在の経営体制を維持しようとする経営者の暴走」と批判した。
知事要請の有無をめぐり、同委の見解を排除した最終報告書がまとめられる方向だ、とのマスコミ各社の報道などを受け、郷原氏が九電をけん制した形だ。
「やらせメール」問題は、玄海原発(佐賀県)の運転再開に関する県民向けの説明会(6月)をめぐり、九電の課長級社員が、子会社社員らに再稼働支持の意見メールを送るよう事前にメールで依頼した、というものだ。
この「やらせメール」について、第3者委の報告書は、「知事から要請を受け、(略)組織的に行われた」と指摘した。
「知事からの要請」とは、6月の説明会に先立ち、古川知事と九電幹部らが会談した際の会話のことを指している。九電側作成の知事発言メモでは「ネットを通じて(再稼働)賛成の意見をもっと出してもらいたい」と書かれている。
第3者委は、こうした知事の発言が、「(やらせメールに)決定的な影響を与えた」と認定している。
知事も九電も「要請」否定
一方、古川知事は「要請はしていない」と一貫して否定している。第3者委報告書が出た9月30日にも、会見で「投稿を要請していない、と説明してきたが、認定が変わらず残念」と述べた。
九電側も「知事の要請」は否定し続けている。九電側作成の知事発言メモは、知事の真意を汲み損ねたもの」だとの認識を示し、最終報告書にも、メモがメールの発端ではあるが、そのメモは知事の真意とは異なるものだった、という趣旨の文言を盛り込むとみられている。
電力会社と地元自治体との関係から、九電側としては、さすがに真正面から「やらせメールは知事のせいです」とは言いにくいのではないかと見る向きもある。だからといって、第3者からなる委員会の報告を無視するとすれば批判を受けるのは必至だ。
第3者委報告書は、6月の説明会だけでなく、05年のプルサーマル計画をめぐる公開討論会でも「県側の意向を受け、九電がやらせを行った」と認定。当時の知事も古川氏で、報告書は「九電と知事との不透明な関係」を指摘している。
朝日新聞は10月2日付朝刊の社説で、要請について反論する古川知事について、「一般論を話したとしても、発言を電力会社がどう受け止めるか、重みを考えるべきだった」とたしなめている。
九電は、どんな最終報告書をまとめるのだろうか。また、報告を受ける経済産業省が、どんな評価を下すのかにも注目が集まる。