円高ではメリット少なく、政府は円安誘導を
TPPは例外なき関税撤廃であり逃げ道はないとの極論もある。
どんな国際交渉でも例外はある。従来のTPP(4か国参加)でも1%程度の例外品目があった。また、即時撤廃というわけでもなく、段階的撤廃が可能であるし、チリの乳製品、NZの繊維、履物等の10年超の長期的自由化も認められている。
いったん交渉に入ったら参加せざるを得なくなるとの反対論もある。
どのような国際協定や国際枠組みでも、最初から内容が確定していることなどなく、交渉によって内容が確定する。交渉に入ったが参加しない例などいくらでもあるし、いったん交渉妥結したが国内で議会の承認が得られずに参加しない場合もいくらでもある。
いずれにしても、TPPに関する反対論は、古今東西で見られた陳腐なもので対応策もいろいろあるが、一方で重要な情報を国民にもたらしてくれる。それは、誰が既得権者であるか、はっきりわかる。いかにも、国民のためといいながら、その主張を丹念に読めば、既得権者であってその既得権を失いたくないだけなのがわかる。これは貴重な情報なので、我々はしっかり監視する必要がある。
なお、一つ留意すべきことをいえば、円高のままではTPPのメリットが少なくなり調整が困難になりがちだ。政府は円安にしてTPPのメリットを最大にしなければならない。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2005年から総務大臣補佐官、06年からは内閣参事官(総理補佐官補)も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「財投改革の経済学」(東洋経済新報社)、「さらば財務省!」(講談社)など。