週刊ポスト最新号が「『豪華官舎』利権で財務官僚がゼネコンに続々天下りしている」との見出しの記事を載せた。
首都圏の書店などへ2011年10月11日に並んだ最新号(10月21日号)では、このほど再凍結が決まった埼玉県朝霞市の国家公務員宿舎建設について、「問題の根底には、所管する財務省と建設業界との利権構造がある」と指摘している。
「受注2社へ財務省OB」
ポスト記事によると、国家公務員宿舎「朝霞住宅」を09年に105億円で落札した大林組は、05年7月に財務省の東京財務事務所次長が天下り、その3か月後に「清水町住宅」(東京都)を受注していた。
また、「公共工事に縁の薄かった」長谷工コーポレーションも例として取り上げ、04年と07年に財務省OBを計2人受け入れ、08年に東京都内の小金井住宅など2住宅の建て替え工事を受注したと、と時系列で伝えている。
上記2社の例に触れた後、「受注と引き替えの天下りと疑われても仕方がない」と指摘している。
記事では背景として、06年以降に古い官舎の建て替え・集約に伴う官舎建設のペースが加速したことや、銀行の管轄が金融庁へ移る中、財務省が「天下り先の確保に四苦八苦していた」ことを挙げている。
記事が指摘している「天下り」は、計2社3人だ。3人とも財務省時代の直近の役職などに触れている。うち2人は、関東地区の官舎立て替えなどを受け持つ関東財務局からの天下りだとしている。財務省と大林組、長谷工コーポレーションのコメントも掲載している。
J-CASTニュースが大林組など2社の広報に確認したところ、記事掲載のコメントとほぼ同様の回答が帰ってきた。
大林組は「個別工事の内容や人事は公表しておりません」「正式な入札手続きを経て落札者として決定しております」としている。
長谷工コーポレーションは、「非常勤の社外監査役を含め財務省出身は2人おりますが、2人とも当社営業に属してはおりません。該当事業の受注と関連性はありません」との答えだった。
財務省「競争入札で適正な発注」
財務省は、ポスト記事掲載の「財務省が管理している資料では(当該再就職者の有無は)把握できませんでした」というコメントについて、「関係資料の保存期間が3年間のため」と補足した。
また、資料がある過去3年分の再就職者(届け出義務がある省離職後2年以内)について、国家公務員宿舎建設・立て替え事業の受注業者への在籍の有無を調べたところ、1人も再就職者はいなかったという。工事については「競争入札を行い、適正な発注だった」と認識している。
「天下りはなくならない 間違いだらけの公務員制度改革」(明文書房)の著者、作家で介護・コンサルタント業の有田恵子氏に話を聞くと、「天下りを受け入れるのは見返りを求めるからで、今回の週刊ポスト記事の指摘は納得できる」と話した。
一方、「財務官僚の出世と人事」(文春新書)などの著書がある元読売新聞記者で経済ジャーナリストの岸宣仁氏は、「天下りすべてが悪いと考えるのはいかがなものか」と指摘した。
主にキャリア官僚が慣例的に同じ民間ポストに就くことや、天下りを繰り返す「渡り」には反対だが、能力を評価された上での再就職は認めて良いと考えている。
今回の「天下り」3人の最終ポストが記事の通りなら、ノンキャリア組の再就職である可能性が高いという。「一概には言い切れないが、キャリアの天下りと比べると工事受注などへの影響力は強くないと考えた方が自然ではある」と指摘した。