米では新規参入業者にも「iPhone効果」
KDDIから新型iPhoneが発売されるかもしれない、とのニュースが飛び交った9月下旬、電波状態がSBMより優れていることから、つながりやすさを求めてKDDIへの乗り換えを考える人からの期待が高まった。ところが両社から料金体系が発表されると、KDDI版のデータ通信の月額料金がSBMを上回ることが判明。これに対してSBMは、これまで「iPhone」を販売してきた実績を強みに、旧モデルの「iPhone 3G」「iPhone 3GS」を2年契約した利用者に向けて、途中解約しても本来支払うべき残金を免除するとした。金額的な優遇が受けられることは、既存ユーザーにとって「SBMにとどまろう」という動機づけになったはずだ。
技術面でもやや不安が残る。SBMは10月7日の会見で、KDDIの通信規格である「CDMA」について、データ通信と音声通信が同時に扱えない点を指摘した。例えば、データをダウンロードしている最中に電話がかかってきた場合、通話に切り替えるとダウンロードが継続できなくなる。場合によっては、通話を終えてから再度ダウンロードをやり直さなければならなくなるという。
SBMからの顧客の「大量移籍」が今ひとつ進まず、初めてiPhoneを取り扱うため懸念材料を払しょくしきれないうえに、既存の顧客に機種変更を促すにも、SBMのような「残金免除」といった特典を打ち出せない――。KDDIにとってこのようなマイナス要因が膨らめば、「iPhone売れ残り」というまさかの事態に陥りかねない。
ただし、暗い材料ばかりではなさそうだ。米国で、AT&Tの「独占販売」が崩れて2011年2月にiPhoneの販売を開始した通信会社大手ベライゾン・ワイヤレスは、KDDIと同じ「CDMA」方式を採用している。両社は4月に、2011年第1四半期決算を発表したが、AT&Tは懸念されたiPhone顧客の流出を食い止め、顧客数は純増。新規参入したベライゾンも、iPhoneの販売数が220万台に達し「iPhone効果」は抜群だったようだ。
ベライゾンのようにKDDIも、「iPhoneを購入しようか」と様子を見ている消費者に対してサービスの優位性を証明していければ、一気にシェアを伸ばす可能性はある。