もし創業者の本田宗一郎が生きていたなら、今のホンダの低迷に歯がみしたことだろう。利益の多くを占める北米市場でのシェア低下、中国でも苦戦、国内でも東日本大震災からの復旧の遅れが目立つなど、まったく精彩を欠いている。
米調査会社のオートデータによると、2011年9月の米新車販売台数でホンダは8.0%減の8万9532台。5か月連続で前年同月を下回った。
北米では日産に抜かれて第6位に
自動車の北米市場は9月、日産自動車が躍進。前年同月に比べて25.3%増の9万2964台と大きく伸ばし、ホンダに代わって5位に順位を上げた。
この春にフルモデルチェンジしたばかりの売れ筋の「シビック」は、8月の米消費者団体専門誌「コンシューマー・レポート」の製品評価で、小型セダン部門12車種中11位という最低水準に位置づけられ、消費者の推奨リストから外された。それもあってか、9月は26.4%減の1万3724台にとどまり、「アコード」も13.0%減の1万8639台と振るわなかった。
新型シビックの低迷について、ホンダは「評判がよくないのは聞いています。期待していたモデルでしたが、競合他社に比べてデザイン面や性能の部分でお客様から進化が十分でないと受け止められてしまった。お客様の声を真摯に受けとめ、改善すべきところは改善していきたいと考えている」と話す。
ホンダは中国でも苦戦している。BNPパリバ証券の自動車セクターアナリスト杉本浩一氏は、「これまでは中型車が好調だったが、現状は『フィット』よりもさらにダウンサイジングが進んでいるというのに対応できていない」という。
杉本氏は現地ニーズをとらえきれないことが原因とみており、「競争が激化していることでニーズも細かくなっているときに、研究開発体制がそれについていけなくなっている」と指摘する。
国内生産台数でトヨタや日産、スズキ、マツダに続く第5位
ホンダは国内でも冴えない。9月28日に国内乗用車8社が発表した8月の国内外の生産、輸出、販売の実績(速報値)によると、ホンダは国内生産台数でトヨタや日産、スズキ、マツダに続く第5位。海外生産台数は3位。国内販売はスズキ、ダイハツに次ぐ5位で、なかでも輸出では日産が前年同月比34.1%増(第3位)、マツダが21.4%増(第2位)と躍進するなかで、三菱自動車や富士重工業よりも低い、37.8%減の7位と失速した。
4項目とも前年同月に比べてマイナスとなったのは、ホンダだけだ。
ホンダは低迷の原因を、「震災の影響で生産が追いついていないため」と繰り返す。ライバルが生産体制を整え、ほぼ復旧するなかで、「一部の部品も遅れが残っている」とも明かすが、その半面、「回復は顕著。10月、11月と徐々に追いついていきます」と、強気の姿勢を崩さない。
「1社でなんでもやっていくのは無理がある」
こうしたホンダの状況に、TIWの自動車セクターアナリストの高田悟氏は、厳しい見方をする。
「北米市場は供給力が戻っても米国の景気次第なので先行きは不透明。国内は『国内は軽の強化』をあげながら、スズキやダイハツには及ばず。ハイブリッド車もトヨタの牙城を崩せず、ホンダは特徴を失っている。さらには日産が三菱自やスズキとのOEM提携を活用して、うまく市場に対応しているのとは対照的に、ホンダは北米に中国、国内と、1社でなんでもやっていこうという。そこに無理がでてきているのではないか」