消費者の好みが多様化し、新商品が発売されてはすぐに消えていく現代。だが、数十年、中には何百年もの長い期間、いくつもの時代を生き抜いてきた商品がある。
そんな「ロングセラー商品」を紹介する「日本のロングセラー商品展」(凸版印刷、日本パッケージデザイン協会など主催)が 東京都文京区の印刷博物館で2011年11月6 日までが開かれている。どんな商品が長く消費者に受け入れられているのだろうか。
展覧会では300点の国内の長寿商品が紹介されている。最も古いものは1597年に製造が始まった「宇津救命丸」。続いて1602年生まれの「養命酒」。いずれも関が原の戦いごろから400年以上も続き、いまだに高い知名度を誇る超長寿商品だ。
さすがにこれらは特異例だが、100年前後の長寿を誇る商品は珍しくない。「三ツ矢サイダー」は1884(明治17)年生まれ、「森永ミルクキャラメル」「ヤマト糊(のり)」はいずれも1899(明治32)年生まれ。「宝焼酎」(1912=大正元年)やカルピス(1919=大正8年)、「森永ミルクココア」(同)なども100年近く現役で頑張っている。
商品ブランドは一般的に30年が寿命だとされるが、これらの商品が長期間、生き続けられた秘けつは何か。子どもの薬として長く利用されている「宇津救命丸」のパッケージのデザインは大正時代から変わっていないという。このほかロングセラー商品には、名前を聞いただけでパッケージが思い浮かぶものが多い。商品自体の良さはもちろんだが、商品のデザインもまた大きな要素となっているようだ。
同展の併設展「パッケージデザインの勘ドコロ」では、各メーカーがロングセラー商品のパッケージ開発の経緯について語っており、そこにはさまざまなヒントが示されている。
「三ツ矢サイダー」は、「オシャレ感より清潔さ、驚きより安定感、何より安心感を大切に」を重視したという。ファン層が広い「ヤクルト」(1935=昭和10年)は1968年に現在のプラスチック容器になったが、その形状はこけしをイメージ。容器についたくびれは、お年寄りから子どもまで、どんな人でも持ちやすいようにと工夫された。
「キューピーマヨネーズ」は国産初のマヨネーズとして1925(大正14)年に発売された。特色となっているデザインの赤い編み目はテーブルクロスのイメージから食卓を表現、キューピー人形は「幅広く愛されるように」との思いを込めた。その願いは「安全・安心を基本に、おいしさを届け、食卓を豊かにしたい」。
一つの商品としてパッケージされたものが市場に流通する形式は近代社会に入ってからになるという。開発部門の思いをデザインとして具体化する、そしてそのデザインが消費者に受け入れられ、定着する。ロングセラー商品にはそんなデザイン面も含めた創造性が不可欠なようだ。