高級時計や宝飾品などの高額商品が売れている。東日本大震災後に広がった自粛ムードと、中国などからの外国人観光客の急減で百貨店などの高額商品は一時、さっぱり売れなくなった。
しかし震災から半年が過ぎて、抑えていた消費意欲にじわりと火がついたようだ。
「2000万円高級時計も売れた」
大手百貨店の2011年9月の売上高(速報値)は、4社のうち3社が前年同月比でマイナスとなった。
三越伊勢丹ホールディングス(HD)は前年同期比1.1%減。伊勢丹新宿本店と三越銀座店が前年実績を超えたが、三越日本橋本店が4%減だった。高島屋は、婦人服や紳士雑貨などが約5%減と振るわず、1.8%減となった。そごう・西武は0.6%減だった。
三越伊勢丹とそごう・西武は震災のあった3月以来、半年ぶりの減少。Jフロントリテイリング(大丸松坂屋)は1.5%増と健闘した。
全体の売上げが振るわないなかでも、高額商品の販売は「別物」だ。三越伊勢丹HDは、宝飾品や時計などの売り上げが伊勢丹新宿本店で17%増、大丸松坂屋も美術品が11.6%増と、ともに2ケタ増。高島屋も美術品が7.2%増と好調だった。大丸松坂屋では、紳士服や呉服品、高級ブランド品も売上げを伸ばした。
そうしたなか、三越伊勢丹HDは「高級時計の売れ筋はブランド品の機械式の新商品で、100万円超のものが売れています。2000万円もの高額品の購入もありました」と話す。宝飾品も100万円以上が売れ筋で、「こうした状況は7月以降から続いています」という。
購入者の多くは、震災後の自粛ムードの中で買い控えていたと思われる富裕層。「給与所得者などの顧客層の動きが鈍く、(富裕層が)突出しています。これまで、こんな動きをすることはありませんでした」(三越伊勢丹HD)と驚いている。
外国人観光客も戻り、「ブランドのバッグや洋服などを買っていく」。欧州の財政危機などを背景とする円高で不安があるものの、外国人観光客の売り上げは伊勢丹新宿本店の売上げベースではすでに前年を超えているという。