「がんに効く」どこまでセーフか 出版社員やフリーライターら逮捕

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   ネットや本にあふれる「がんに効く」という表現をめぐり、出版社の社員や健康食品販売会社の社長らが逮捕された。健康食品のネット販売や書籍で「がんに効く」という表現を使っているほかの会社は問題ないのだろうか。

   神奈川県警は2011年10月6日、「がんに効く」と本で宣伝して健康食品を無許可で販売したとして、健康食品販売会社「キトサンコーワ」(東京都)の社長や出版社「現代書林」(同)の元社長ら5人を薬事法違反の疑いで逮捕した。

体験談で「がんが消えた」

   ほかに逮捕されたのは、現代書林の社員と元社員、それに本を書いたフリーライターだ。朝日新聞の6日付夕刊によると、うち4人は否認しているという。

   食品会社の社名と同じ「水溶性キトサン キトサンコーワ」という商品(約400粒で1万円など)を販売する際、「がんに効く」とうたった本「ガン 生活習慣病 医師・研者が認めた! 私がすすめる『水溶性キトサン』」(3月絶版)を添えて送っていた。

   薬事法上、病気などへの効能をうたう商品の販売は都道府県の許可を得る必要がある。今回の食品会社は、許可を得ずに販売した疑いがもたれている。そもそも、がん抑制効果をうたう承認を得てない商品だった。

   また、出版社側の容疑は、本出版により無許可販売をほう助したことや、未承認の医薬品の広告をしたことだ。無許可販売をほう助したとして出版社関係者に薬事法を適用するのは異例という。

   似たケースは過去にもあった。2006年、「がんが消えた」などとキノコの一種の健康食品を本で宣伝、販売したとして、健康食品販売会社と出版社の両社社長(起訴時)が有罪判決を受けている。

   薬事行政にかかわる複数の関係者によると、インターネット上の「がんに効く」表記をめぐっては、都道府県などが行政指導をしては別の会社などがまた同様のことをする、という「モグラ叩き状態」が続いている。悪質な業者がいれば警察と相談するそうだ。

効能うたう手口が巧妙化

   厚生労働省によると、「がんに効く」表記問題を含めた健康食品関連で業者に行政指導した件数の全国的なとりまとめはない。

   例として神奈川県に聞いてみると、横浜市など5市を除く県管轄内では、2010年度に8件の指導を行い、ほかに30件の通報(指導要請)を管轄外自治体へ行った。うち、「がんに効く」表記問題が含まれているかどうかは分からないそうだ。

   「効能効果 胃癌 肺癌」「がん細胞の増殖を阻止」などの表記が薬事法上認められている医薬品はいくつもあり、広告も可能だ。しかし、広告の範囲は、一般向けは認められておらず、医薬関係者向け業界紙・誌などに限定されている。

   ということは、一般書籍などで「がんに効く」という表現があれば即アウトなのか。薬事行政関係者によると、「広告」にあたるかどうかなどが問題となるため、即アウトというわけではないそうだ。

   「がんに効く」とうたおうとする健康食品業者の手口は巧妙化している。

   「個人ブログ」でがん抑制効果を主張しつつ、同じページに載せた商品紹介欄をクリックして商品サイトへ飛ぶと、そこには「がんの『が』の字もない」といった例が多数見受けられる。「会社としては違法なことはしてませんよ」「あくまで個人の人が感想を述べ、勝手にリンクを張ってるだけですよ」という形を取ろうとしていると見られるという。

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