MBO助言ビジネスに証券会社乗り出す 水面下で検討しそうな企業に打診始める

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   株式市場からの撤退も意味するMBO(マネージメント・バイアウト、経営陣による自社買収)が増加している。株主からの「圧力」を嫌う経営者が、このところの株安を好機と見てMBOに踏み切り、上場廃止するケースも多い。調査会社トムソン・ロイターによると、2011年は9月までに昨年の通年件数に並ぶ14社がMBOを発表。

   年間で過去最高だった2008年(17件)を上回る勢いだ。法人向け業務が縮小する証券会社にとってはビジネスチャンスだが、「株式市場の停滞に手を貸すようでもあり、痛し痒しだ」(国内大手証券幹部)との声も聞かれる。

上場維持する費用は、小さな会社でも年間1億円

   ある証券会社の幹部は「東日本大震災、世界同時株安に見舞われて低迷する株式市況は、経営者をMBOに向かわせている」と語る。例えば9月16日にMBOを発表した、人材派遣などを手がける東証2部上場の日本医療事務センターの同日終値は320円。 リーマン・ショック後の10年 の最安値(2008年10月30日、297円)を視野に入れる水準まで落ち込んでいた(MBO発表後は500円台に急騰)。買い付ける際の上乗せ価格を多少はずんだとしても、買収側の負担は大きくない、というわけだ。

   もちろん、上場を維持するコストをかけた上に株主からの経営監視を受けるのはたまらん、という経営者もいるよう だ。実際、情報開示など上場を維持する費用は、小さな会社でも年間1億円程度かかるという。経営陣の退陣要求を突きつけた米投資ファンド「スティール・パートナーズ」ほどでなくても、株主からは増配などの還元策を求められ、経営に注文もつく。上場する以上当然のこととはいえ、経営判断の自由度は狭まる。

「村上ファンド」系の「エフィッシモ」が撤退

   こうしたなか、かつての「村上ファンド」系の「エフィッシモ・キャピタル・マネージメント」がともに大株主で、東証2部上場の立飛企業と新立川航空機は8月末、両社経営陣共同のMBOを実施すると発表し、エフィッシモが撤退することになった。変わった名前の会社だが、両社とも東京都立川市近辺で不動産業を営む元は同根企業。立飛企業はMBO発表前の株価を57%、 新立川は104も上回るMBO価格を設定し、エフィッシモに「売り抜け益」を得て去ってもらうことに成功した。

   また、景気低迷でどちらかと言うと「金余り」の状況が続く中、上場しているようなある程度信用力のある会社なら、 金融機関からの借り入れコストも高くない。半面、株価が沈む市場で資金調達というメリットは大きくない。こうした面でもMBOに進む環境は整っているといえる。

   MBO人気の中、証券会社はMBOの助言ビジネスに焦点を当てており、「水面下で検討しそうな企業に打診を始めた」(大手)という。買収資金を貸し付ける銀行にとっても 手っ取り早いビジネスだ。ただ、新規上場社数の低迷が続く中でのMBO= 株式市場からの退場の増加とあって「このままでは東京市場が廃れてしまう」と危惧する声も上がり始めている。

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