日本国債が危険水域にジワジワと接近している。CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)と呼ばれる日本国債を保証するコストが、過去最高水準を更新しているのだ。
期間5年物で、2011年8月31日に103.65bp(ベーシスポイント、1bp=0.01%)だったCDSは、9月30日には147.2bpに上昇した。ギリシャやポルトガルなど財政不安に陥っている欧州諸国に比べれば、まだまだ低いが、信用力が低下していることに変わりはない。
「本来の信用力」とみられる
欧州で財政悪化が著しいPIGS諸国のCDS(保証料)は9月30日現在で、ポルトガル1098.67bp(10.98%)、イタリア422.67bp(4.22%)、ギリシャ5466.67bp(54.66%)、スペイン382.40bp(3.82%)。保証料が高いほど、国債がデフォルトに陥る可能性が高まっていることになり、欧州連合(EU)からの融資がなくなった途端に財政破たんを来たすといわれているギリシャは、じつに50%を超える保証料になっているわけだ。
ただ、CDSはあくまでもデフォルトをカバーするためのデリバティブ取引なので、「国債ほどマーケットが大きいわけではなく、また市場参加者の思惑が働きやすい。そのため、CDSの動きだけでデフォルトの可能性を判断するのはむずかしい」と、国際金融アナリストの枝川二郎氏は話す。
たしかに、日本の147.2bp(1.47%)の保証料は過去最高水準とはいえ、PIGS諸国に比べてまだまだ低いから、デフォルトの可能性もそんなには高くないとみられる。
CDSの上昇について、枝川氏は「日本国債の利回りが1%前後だというのに、保証料が1%を超えた意味は大きく、海外投資家が評価した、日本国債本来の信用力とみることができなくもない」と話す。
日本国債のCDSは、フランスの180bp(1.80%)に近づき、ドイツの100bp(1.0%)、米国の55bp(0.55%)を上回っている。
日本国債の保有はコストが高い?
CDSの上昇は国債の格下げなどに影響することがあり、2011年1月に日本国債のCDSが急上昇した時には、米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が日本国債の格付けを引き下げたことが背景にあった。
枝川氏は、「震災の復興財源をめぐる議論に国債の発行はあるが、その一方で公共事業の増加などが見込めることもあり、それほど悪い材料はないはず。なぜ最近になって急激に(日本国債の)CDSが上昇しているのか、はっきりした原因はわからない」という。
一方、日本国債の発行残高は2010年度末に768兆円と世界でも最大規模だが、その調達コストは5年物国債の利回りで0.36%、10年物でようやく1.03%という、世界最低のレベルにある。
日本国債の多くは国内金融機関などが保有していることもあって、「日本国債は、デフォルトの心配がない」などといわれるが、利回りよりも保証料のほうが高いのだから、「理屈のうえでは、損してまでも保有している」ことになる。