液晶の雄・シャープにも影響
具体的に、新会社はまず、機構からの2000億円を活用して新ラインを建設し、海外勢を突き放す考えだ。だが、課題は3社が本当に融合できるか。3社の主要工場は国内だけで6カ所にもなり、技術も異なっている。これを、どう統廃合するのか、さらに新生産ラインをどこに建てるか、いずれも調整は難航必至と見られる。
有機ELパネルについても、東芝、日立が新会社に全面協力する方針。これに対し、業務用の開発技術を持ち製品化で先行するソニーは、「今回の協業には有機ELは入っていない」(吉岡浩副社長)と、技術的支援にとどめる考えといい、火種が残る。
3社統合は、液晶の雄・シャープにも影響を与えそうだ。価格破壊が進む20~40インチのテレビの液晶生産を縮小し、スマートフォンなどで需要が高まる中小型液晶を成長戦略の柱の一つに掲げ、液晶テレビ生産の代名詞だった亀山工場(三重県亀山市)の大半を、中小型パネルの生産に転換するなど、大幅な戦略転換を図ったところ。「iPhone」「iPad」の米アップルから投資を受け、中小型パネルを大量供給する交渉も進んでいるといわれる。これについては、「アップルの"下請け"になって生殺与奪の権を握られないか」(業界関係者)と懸念する声もある。
円高の長期化も含め、日本の液晶業界の前途は多難といえそうだ。