東芝、日立製作所、ソニーの3社が、スマートフォン(多機能携帯電話)向けなどの中小型液晶パネル事業を統合することで基本合意し、2012年春に新会社「ジャパンディスプレイ」を設立。世界シェア2割超で首位(3社の単純合計)の国策会社が誕生する。
だが、3社が本当に融合できるのかなど、課題も多く、ライバルの韓国・台湾勢を突き放そうという狙い通りに進むか、予断を許さない。
中小型パネルは日本勢の「最後の砦」
「(日本の)トップ3社が結集すれば世界屈指のメーカーになると確信する」
この事業に2000億円(70%)を出資する官民ファンド、産業革新機構の能見公一社長は8月末の会見で自信を見せた。2012年3月期の3社合算約5700億円見込みの売上高を、2016年3月期には7500億円以上の伸ばす目標も掲げた。
液晶パネル市場は、生産設備への大規模投資などで競争力を高めた韓国・台湾勢が高シェアを握る。テレビ用パネルなどでは「国内の競争で消耗」(中西宏明・日立社長)し、価格下落に伴い、韓国のサムスン電子などにシェアを奪われた。その中で、スマートフォンの普及などで急成長する中小型パネルは高性能の日本勢が優勢を保つ「最後の砦」。ただ、研究開発投資や設備投資競争を勝ち抜くには、「(1社ずつでは)世界的にはスケールが小さい」(佐々木則夫・東芝社長)。そこで、規模拡大と機構からの出資で投資余力を高め、テレビ用で韓国勢に苦杯をなめた失敗を繰り返すまい、というのが今回の統合の狙いだ。次世代パネルとして有望視される有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)の開発にも注力する考えといわれる。