群馬まで伸びた「セシウムの帯」 コメや野菜は大丈夫、と産地は強調

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   東京電力福島第1原子力発電所の事故で放出された放射性セシウムが群馬県にまで達し、一部地域で蓄積していることが分かった。原発から250キロ離れた地域でも、蓄積が見られたという。

   群馬県は、高原野菜をはじめコンニャク、さらには「下仁田ネギ」と農産物の生産が多い。影響が心配だ。

嬬恋村や「下仁田ネギ」はセシウム検出なし

特産の野菜や果物の影響が心配(写真はイメージ)
特産の野菜や果物の影響が心配(写真はイメージ)

   文部科学省と群馬県は、2011年8月23日~9月8日に航空機による放射性物質の蓄積状況のモニタリングを県全域で初めて実施した。地表から1メートルの高さでの「空間線量率」と、地表面への放射性セシウムの沈着量がマップ化されている。

   測定結果を見ると、半減期が30年のセシウム137の蓄積量は県北部、さらに東部の桐生市やみどり市の一部で、1平方メートル当たり10万~30万ベクレルに上った。長野県と接する県西部でも、同3~6万ベクレルを観測した地点がある。放射性セシウムの汚染は、福島県北部から栃木県北部に流れ、さらに群馬県東・北部にまで帯状に連なっている。

   懸念されるのは、農産物への影響だ。群馬県は野菜や果物、コメ、原乳などの放射性物質汚染の検査結果を毎週実施し、公表している。最近では、例えば9月22日、県名産の「下仁田ネギ」は「検出せず」、また全国一の生産を誇るコンニャクも、9月7日に渋川市や安中市で採れたものからは検出されなかったと発表された。高原野菜で有名な嬬恋村は、マップでも比較的蓄積量が少ないが、9月に検査が行われたキャベツやハクサイでの放射性セシウムの検出はない。

   群馬県環境保全課に取材すると、県東部で蓄積量が多かったみどり市や桐生市は、航空機モニタリング前に県の職員が別途測定していたという。比較的高い値が出たのは「民家のない山間部だった」と説明する。一方で他の地域では、農地として使われている場所が該当しているケースもあるようだ。

   ただ今回の調査結果自体はある程度「想定内」だったと、県農政部技術支援課は打ち明ける。県では原発事故から間もない3月19日から、放射性物質の土壌サンプリング調査を実施。また群馬大学の早川由紀夫教授が公表している「放射能汚染地図」を参考に、どこに放射性物質が堆積するかも早い段階で把握していたようだ。

検査の実施と結果公表が「最善の策」

   文科省による航空モニタリングでは、ヘリコプターに搭載した大型の放射線検出器を使って地上150~300メートルの高さから計測している。その値は、「航空機下部の直径約300~600メートルの円内の測定値を平均化したもの」だ。一方、群馬県では国と協力して、これまでに県内13か所での放射性物質の土壌検査を実施。県技術支援課によると、4月の段階で最も高かった場所で土壌1キロあたり674ベクレルだったという。しかし、農林水産省は、コメの作付けに際して1キロあたり5000ベクレル以下であれば作付けを認めており、検査結果は基準を大幅に下回っている。コメ以外は国として明確な基準を定めていないものの、「参考値」として農水省が示す野菜や果樹の作付け可能な値と比べても「問題のないレベル」(技術支援課)。県は現在も検査を続けているが、「ここ最近は『検出せず』がほとんど」と強調する。

   とはいえ、「セシウムの帯」が群馬にまで流れている事実が公表された以上、農産物の生産地としては気が気でないはずだ。農業生産に力を入れている北部の川場村は、秋以降にコンニャクやリンゴが収穫時期を迎える。村役場の広報担当に聞くと、「県や公的機関に協力を得て農産物の放射性物質検査を実施しているが、今後も同様に検査内容を開示して、結果に応じて判断していく」と話す。航空モニタリングでは、村の一部でセシウムの蓄積量が多いとの結果だったが、村の総面積の約85%が山林にあたるため、「村中を除染するといっても現実的には難しい」(広報)。そのため、これまでどおり放射性物質の計測を頻繁に実施して情報を明らかにして、生産者と消費者に安心してもらうことが最善の策と考えている。

   県西部に位置する下仁田町では、ネギが特産品ということもあり、県の検査に加えて町独自でも検査を実施している。ネギを栽培している地域から3か所を選び出して、その結果をウェブサイトに公表。放射性セシウムは検出されなかったと、下仁田町農林建設課の担当者は話す。

   今のところ目立った被害は出ていないようだが、川場村と下仁田町いずれの自治体も「風評被害が出ないように」と気を引き締める。

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