国際大会「国際地理オリンピック」の国内予選募集ポスターで、北方領土を「ロシア領」と色分けした地球儀の写真が使われていた。産経新聞が国内実行委員会側に指摘し、ポスターの作り直しが決まった。同予選は、文部科学省も後援している。
2011年9月30日付朝刊1面(東京最終版)で、産経新聞が報じた。問題のポスターには、各国を色分けした英語表記の地球儀の写真が載っていた。日本は緑、ロシアはオレンジだ。そして、国後島などの北方領土が「ロシア領」を示すオレンジになっていたのだ。
高校などへ配布寸前で発覚
国内予選第1次選抜の申し込みが10月1日から始まることを受け、9月30日から全国の高校などへこのポスター約3200枚が配られる予定だった。しかし、産経新聞の指摘を受け作り直しが決まったため、配布を中止した。大会の対象は、高校生あたりの世代だ。
予選を主催する国際地理オリンピック日本実行委員会のサイトには、ポスターの図柄は載せていなかった。ポスターが完成し、大会共催の日本地理学会内部に約100枚配った段階で産経新聞が情報を入手したようだ。対外的にポスターが出回る前に「水際」で食い止められた形だ。
国際地理オリンピックは、1996年から隔年で実施されている。2010年の台湾大会には30弱の国と地域が参加、日本の高校生が銅メダルを獲得している。次回は2012年8月、ドイツ・ケルンで世界大会が開かれる。
日本国内では、12年1月に1次選抜、3月に2次選抜があり、代表の4人を決める。世界大会はすべて英語で出題(辞書持ち込み可)され、国内予選でも出題の2割が英語という。
産経新聞記事は、大会関係者による「単純なミス」との釈明を紹介しつつ、「背景に領土問題に対する意識の希薄さを指摘する声も上がった」と、識者コメントを交え厳しい見方を示している。
韓国製の地球儀を使っていた
実行委員長を務める筑波大大学院の井田仁康教授(社会科教育学)に話をきいた。
教授によると、ポスターは大会を協賛する出版社がつくったもので、縦60センチ、横42センチ。実行委メンバーらが事前に図柄を確認したときは、電子メールで送られた縮小済みの添付資料で見ただけだったので、問題の箇所の色合いには「図案が小さく、気付かなかった」という。
出版社側の担当者にも確認した上で、「意図的なものではなかった。注意が足りなかった」と話した。「今後は気をつけたい」とし、図案決定前に実物大の図柄で確認することなどを検討する。
国際大会の予選ということもあり、英語表記の地球儀の写真を使った。かつ、安い地球儀を用意したところ、韓国製の地球儀だったという。ちなみに、韓国側が東海表記を主張する日本海については、いずれの記載もなかった。
中川正春・文科相は9月30日の会見で、産経報道を受け、「遺憾だ」と述べた。主催者側に対し、再発防止を講じてほしいと近く伝える考えも示した。