東京証券取引所と大阪証券取引所の統合協議は、両者が一時目指した9月中の合意が見送られそうだ。協議のキモとも言える統合比率などをめぐって調整が難航しているためだ。
片方(大証)が上場で片方(東証)が非上場ということも影響している。両者とも今のところ破談は想定していない模様ではあるが、協議が一段と長期化する可能性もある。
大証はじっくり構える
大証の米田道生社長は9月20日の定例会見で統合協議について、「統合の枠組みがどうあるべきか、統合後のガバナンスや運営をどうするか、キチンと議論する必要がある。単に大きくなったら済むモノではない。(双方に)言い分、主張はあるが、接点をぎりぎりまで求める努力をしたい」と述べた。当初は「3カ月」とも言っていた協議期間についても「期限があって何月何日というものではない」とじっくり構える姿勢を見せた。
時計の針を3月10日に戻そう。朝刊で日本経済新聞が「統合協議入り」を報じ、両社トップもほぼ認めた。ちなみに東日本大震災の発生前日である。仮に日経の報道が震災発生前に間に合っていなければ、「その後の展開がどうなっていたか分からない」(東証幹部)とも言われている。
それはともかく、震災で中断した協議は4月に再開した。両社内にプロジェクトチームを作り、財務アドバイザーに証券会社を4社ずつ選定する重厚な布陣。ただ、東証が長年の懸案である単独上場を視野に入れたままのため、「単独上場されれば、規則上すぐには統合できず時間がかかりすぎる」と大証が反発。協議は一時暗礁に乗り上げたかに見られたが、東証が単独上場を棚上げする方針に転換し、歩み寄った。
キリンとサントリー「破談」の先例
その後の協議では、統合の枠組みについて大証が「東証株を大証株に株式交換し大証に統一する」を提案したのに対し、東証は「東証が大証株を株式の公開買い付け(TOB)で100%取得し完全子会社化」を提案。議論が膠着するなか、東証が再提案した「東証がTOBで大証株の3分の2(66%)を上限に取得」の線に落ち着きそうだ。大証が上場や独立性を維持できるためだ。
7月末までに協議はここまで進展し、9月にも合意を得たい考えだった。早ければ来春の統合を目指すには、公正取引委員会の審査などを踏まえるとその辺りでの決着が望ましいとの考えからだ。
ただ、東証は非上場で、上場企業の大証のように客観的に企業価値を計る株価がない。このため重要項目である統合比率で結論を得るのは容易でないのも実情。昨年2月に破談したキリンホールディングスとサントリーの統合交渉も、サントリーが非上場ゆえに統合比率をめぐる両者の思惑の違いがもつれたことが、まとまらなかった一因とされる。とはいえ東証、大証とも「相乗効果で世界的取引所を作る」との統合の意義は共有しており、一致点を探る努力を続ける方針だ。