トヨタ自動車が2011年12月の東京モーターショーでお披露目するとみられている「スモール・ハイブリッドカー」(プリウスC)の概要が明らかになってきた。
新車名は「アクア」。東日本大震災の被災地・東北を生産拠点とし、燃費性能は実燃費に近い新しい測定基準のJC08モードで1リットルあたり40キロ弱になる見通し。この夏以降、「リッター30キロ」を走る低燃費ガソリン車が話題をさらったが、それを凌ぐ燃費性能はトヨタの看板HV車の「プリウス」をも上回り世界最高となる。
低燃費競争で「トップ」を走る
マツダが2011年6月に発売した新型デミオ(JC08モード基準でリッター25キロ)や、9月20日発売したばかりのダイハツの新型軽自動車「ミラ イース」(同30キロ)と、HV車に劣らぬ低燃費ガソリン車の発売が続くなかで、トヨタは早ければ2012年1月にも「リッター40キロ弱」を走るスモールHV車の「アクア」を投入。激しくなる低燃費競争で巻き返しを図る。
低燃費競争でトヨタは、09年に発売した「3代目」プリウスがJC08モードで「リッター32.6キロ」を達成している。ところが、そこに軽自動車とはいえ、「リッター30キロ」のガソリン車が登場。低燃費競争でHV車の優位性は失われつつあった。
一方、価格面では、ホンダが2010年10月に発売した「フィット ハイブリッド」が159万円からということもあり、「アクア」の販売価格は100万円台後半、プリウスよりも約30万円安い170万円前後という見方が有力だ。
プリウスはどうなるのか
気になるのが、これまでトヨタの「看板」を背負ってきた「プリウス」のゆくえだ。プリウスの国内販売台数は2011年8月末の累計で約102万台となり、100万台を突破。世界販売台数は約236万台に達している。
この5月には最大7人乗りのワゴンタイプ「プリウス アルファ」を発売。さらにスモールHV車の「アクア」を投入することで、HV車のバリエーションを増やしてユーザーの底上げを図る作戦のようだ。
とはいえ、プリウスよりも燃費性能がよくて、しかも価格が安い「アクア」の人気がプリウスを上回ることは十分に考えられる。しかも、「アクア」には「プリウス」の冠を付けないらしい。
これまでプリウスは「環境にやさしい エコカー」を前面に押し出してきたことや、販売価格が高価だったことから、富裕層を中心に売れた。「アクア」をプリウスの小型車としてではなく、プリウスもつ「敷居の高さ」を取り除くことで、若者や女性層を取り込みたいという思惑がありそうだ。
トヨタは「アクア」やプリウスの販売戦略について、「将来の商品計画にかかわることなのでお答えできない」としながらも、「プリウスはこれまで通り、継続的に販売していきます」と話している。