10年産米の買いだめも起きていた
しかし、福島県の水田畑作課では、水田の面積が多く、どこから手をつけていいか分からないため、水田についてのホットスポット調査は独自にしていないという。土壌の入れ替えなども進んでいないとしている。
また、たとえ規制値内の米であっても、消費者の不安が解消できない問題もありそうだ。501ベクレルに比べ、500ベクレルなら大丈夫というのは説得力がないからだ。
日本消費者連盟の富山洋子代表運営委員は、不安解消のためには、米のパッケージにセシウムなどの線量を表示することが必要だと指摘する。
「内部被ばくではとりわけ、これ以下なら安全というしきい値はないとされています。お米を食べるかどうかは、最終的には、1人1人の判断になりますから、線量などの情報を消費者にきちっと提供してほしいですね」
客の不安に応えようと、実際に線量を表示しようという米販売店も出てきた。
栃木県内でチェーン店を展開する「お米ひろばさとう」では、検査機関に依頼して生産者ごと品種ごとに線量を測り、2011年10月から店頭に表示することにしている。佐藤直人社長(37)は、こう言う。
「福島県の調査対象が旧町村と大枠があいまいですし、水田も端と真ん中では数値が違うと思います。ですから、お客さんも不安で、どう判断していいか分からないと聞きます。8月には、10年産米の買いだめが起こり、1家族で100キロ買う人もいっぱいいて売り切れてしまいました。今回の線量表示は、お客さんの判断材料の1つにしてもらえればと考えたことです」
一方、線量表示などについては、異なる考え方もある。
スーパー大手の「イオン」では、広報担当者が「表示を増やすと、かえって不要な不安をあおることにもなります。うちでは、不必要で過度の表示はせず、しっかり検査していることを伝えています。10年産米については、偏った動きは見られず、お客さまも冷静に判断されているようです」と話している。