共同購入クーポンサイトの米グルーポンの2010年度売上高が大幅に減り、約半分となった。新規株式公開(IPO)を前に、米証券取引委員会(SEC)の指摘を受け、決算報告書を修正したものらしい。
非上場企業とはいえ、これほど大きな金額をマイナス修正したことは問題視されないのか。
契約店への支払額も「売り上げ」
グルーポンは、飲食店やホテルなどと契約を結び、共同購入型の割引クーポンを販売して、会員との間でクーポン販売が成立した場合に手数料を受け取る。ウェブサイトには「当社が取り扱うサービスが多様なため、契約に関する内容はケースバイケース」と書かれている。売り上げに対する手数料の割合は示されていないが、これまで「50%」と報じられているケースが多い。
単純に考えれば、この手数料がグルーポンの売上高に直結する。しかしこれまでグルーポンは手数料に加えて、お客の「もうけ分」まで売り上げとして計上していたというのだ。例えば、レストランのディナークーポンを100ドルで販売し、50%の手数料だとすると、成功した場合は店側に50ドル支払い、グルーポンが手数料50ドルを受け取ることになる。しかし決算書には、店に支払うべき金額も含めて合計100ドルを売上高に計上していた。
グルーポンはSECに提出した修正報告書で、「従来は会員への請求額を総額として(売上高に)計上していたが、マーチャントフィー(契約店への支払い)を除いた額に改めた」と説明。2010年度の売上高は7億1340万ドル(約542億2000万円)を計上していたが、修正後は3億1290万ドル(約237億8000万円)に修正された。実に半減した計算となる。
米ウォールストリートジャーナル(WSJ)によると、「SECと協議した結果の修正」だったようだ。グルーポンは6月にIPOを申請したと報じられたが、今回の修正はIPOを前にしたグルーポンに対するSECからの「注意」に耳を傾けたのかもしれない。
「合法であればいいだろう」という風潮
それにしても、帳簿上で売上高半減となれば「グルーポンの会計は大丈夫か」と見られないだろうか。国際金融アナリストの枝川二郎氏は、「米企業、特にベンチャーの場合は少しでも好業績に見せようと、ギリギリのところまで(数字を)引き上げようとするケースはある」と話す。「合法であればいいだろう」という風潮が見られるようだ。
今回のグルーポンのケースは、架空の金額を売上高に加えるような粉飾決算ではない。SECとの間で「売上高」について、会計上どう取り扱うか考え方の違いが生じていたのではないかと枝川氏は推測する。非上場のままであれば世間一般に対する責任は薄いため、ある程度の「グレーゾーン」は許されたかもしれない。しかし株式を上場するとなれば責任の度合いは一気に増すため、SECがあらかじめ「危うさ」の排除に乗り出したとも思える。
結果的に売上高が半減したことで、グルーポンに影響はあるのか。枝川氏は、一般的な米国の企業に対する評価として、「売り上げ至上主義ではなく、利益をどれだけ上げたかを重視する」と説明する。そのため、実は売上高を「かさ上げ」してもそれほど意味はなく、逆に目減りするからといって悪影響はあまりなさそうだ。急成長を続けるグルーポンは、創業して3年に満たない。少しでも「背伸び」をしようとスレスレのところで売上高を大きく見せたのだろうか。
だが、WSJは売上高の「下方修正」よりも、実は会員数の変動が公表されていない点が心配だとしている。WSJの分析によると、会員1人当たりから得た売上額は、2009年のピーク時と比べて2011年には3分の1以下に減少。また新規会員1人を獲得する費用は、逆に倍増しているというのだ。記事では「実際に会員を得るコストが増大したのか、それとも以前よりずっと多くの新規顧客を加えたものの、同時に既存客を失っているために費用がアップしたのか」と疑問を投げかけたが、詳細は不明なままだ。