スターバックスが1996年に東京・銀座で国内最初の店舗を開いてから、今年で15年となる。その節目の年、スターバックスコーヒージャパン(SBJ)では関根純氏が新たにCEO(最高経営責任者)に就任した。
関根氏は今後の方向性のひとつに「イノベーションの挑戦」を掲げる。経営戦略上の具体策はこれから練り上げるというが、商品開発にはすでにその姿勢が表れているようだ。
「今後は店舗開発が重要になるだろう」
関根氏は2011年9月21日に開かれたCEO就任会見で、15周年にあたる8月2日に国内1号店の店頭に立ったエピソードを明かした。「開店当時から毎年この日に欠かさず来ているというお客様にも会い、改めて皆様のスターバックスに対する愛情、思い入れの大きさを感じた」という。東日本大震災の影響は小さくなかったと打ち明けるが、5月7日には全店での営業を再開、被害を最小限に抑えて、直近となる2011年第1四半期は前年同期比で増収増益を達成したことを報告した。
国内での出店数は935店舗(9月21日現在)で、今年度は50店を新規出店すると説明。拡張路線に対して「既に飽和状態なのでは」との声が上がっているが、関根氏は都市部での競争激化を認める一方で「郊外や地方はまだ(進出の)余地がある。ドライブスルーやパーキングエリアといった形態での出店が好調」とし、「今後はさらに店舗開発が重要になるだろう」と話した。
世界各国に事業を広げるスターバックスでも、とりわけ日本でのビジネスは優良で、グローバル市場における日本の貢献度は高いと関根氏は胸を張る。15周年を迎えた点については素直に喜ぶ一方、「人間で15歳といえば、骨も筋肉も未発達の少年。健全な成人になるためには、骨太でしっかりした筋肉をつける必要がある。そのうえで今は大事な時期」と気を引き締める。
15周年を記念して定番「ラテ」にも新製品
そのうえで関根氏は、今後の事業戦略の方向性として3つを挙げた。1つ目は出店を含めた店舗などリテール事業の可能性を最大化していくこと、2つ目は「現場力」の強化、そして3つ目が「イノベーションへの挑戦」だという。特に「イノベーション」については既に現場で実践が始まっている。
SBJでは15周年を記念してドリンクを中心に新製品が次々に開発されている。例えば「アップルクランブルラテ」と「アップルクランブルフラペチーノ」は、エスプレッソの商品としては初めてアップルをモチーフにした飲料だと、SBJカテゴリーマネジャーの中島史絵さんは説明する。
「ラテ」はスターバックスの人気の定番メニューの1つで、15年前に銀座の1号店を訪れた最初の客が注文したのもダブルトールラテだったという。そこに、今まで使ったことのないリンゴという素材を用いたのは、「日本の顧客は、常に新しいものを求める」という特性を踏まえたうえで、「イノベーション」に取り組んだのだと中島さんは話す。「アップルクランブル」という、欧米の一般家庭でつくられる菓子を取り入れたのは、「『手作り』というスターバックスが大切にしている価値観を出しながら、自宅にお客様を招いてもてなす雰囲気を出したかった」(中島さん)そうだ。