SMBC日興証券がアナリストを増強している。米シティグ ループと「別離」し、三井住友フィナンシャルグループ(FG)傘下入りして2011年10月で 丸2年。世界連鎖株安など証券業界を取り巻く環境は厳しいが、法人部門を強化し「総合証券」を目指すためにも必要と判断している。
1997年に自主廃業した山一証券を含めた「四大証券」がまだ元気だったころ、日興は傘下にシンクタンクでもあった「日興リサーチセンター」を持ち、自前で多くのアナリストを抱えていた。
アナリストの人数、最近1年間で2倍に
しかし、バブル崩壊から立ち直れない証券不況が続くなかで金融危機を迎える90年代後半、日興の経営も厳しさを増す。ついに1999年、米トラベラーズ(現シティグループ)との資本提携により、日興リサーチセンターは日興の法人部門とともに「日興ソロモン・スミス・バーニー証券」に移された。その後の10年は紆余曲折あるが、日興は基本的に「リテール(個人部門)」の証券会社として生き残ってきた。
ところがリーマン・ショックで経営が傾いたシティが日興を手放し、2009年に三井住友FG傘下入りしてからは、法人部門を自前で構築することになる。シティ傘下時代は、アナリストリポートもシティから買って いたが、法人顧客への説明に使うリポートを作る自前のアナリストを増強する必要性も高くなったわけだ。
日興の調査部門は、株式調査部、金融市場調査部、国際市場分析部の3部門に分かれる。アシスタントなども含めた全体のアナリストの人数は公表していないが、規模としては最近1年間で2倍に増えた。
アナリストの世界は会社間移動が日常的
3部門 のうち、象徴的なのが、2010年8月に新設した国内企業分析などを担当する株式調査部だ。現在は90人程度で、1年前の20人強から大幅に増えた。9月15日現在、調査対象とするのは321銘柄で、調査対象業種は30に上り、野村ホールディングスや大和証券グループ本社に比べても遜色ない。部長についたのは、旧「日興リサーチセンター」出身で、ゴールドマン・サックス証券などで商社担当として著名だった吉田憲一郎氏だ。吉田氏のようにあちこちに散らばっていた旧日興リサーチセンター出身者が「古巣のために」と、給料が減る場合も多いと思われるにもかかわらず、数多く参集している。
もちろん、他社からの移籍は旧日興リサーチセンター出身者だけではない。アナリストの世界は会社間移動が日常的とはいえ、最近の日興による引き抜きは活発だ。
例えばこの8月に野村から33歳の若さで「チーフストラテジスト」として抜擢された阪上亮太氏。全体的な株式の投資戦略をアドバイスする「ストラテジスト」として、日本企業の魅力を世界に発信するため、自分のチームも立ち上げる。
経済分析でも、大和総研から牧野潤一氏がチーフエコノミストに、シニアエコノミストにも大和総研から渡辺浩志氏がついた。