「何が何でもアイフォーン」ではなくなった
KDDIからアイフォーンが発売されれば、国内大手3社のうちドコモだけが言わば「置き去り」となる。もともとドコモはアイフォーン導入に積極的だったとされ、アップルとSBMが独占販売契約を結んだ後も、ドコモの山田隆持社長が「諦めたわけではない」とたびたび「ラブコール」を送っていた。その後もアップルとの交渉は継続中と明かしているが、7月に雑誌の取材に対して山田社長は、アップルと条件が合えばアイフォーンを発売する意志はあるものの「3年前とは状況が大きく異なっている」とトーンダウンした発言をしている。アイフォーンが発売された2008年当時と比べて、米グーグルの基本ソフト「アンドロイド」が登場し、ドコモでもアンドロイドを搭載した機種を開発しており、何が何でもアイフォーン、ということではなくなったようだ。
アスキー総合研究所・所長の遠藤諭氏は「KDDIからアイフォーンが発売されることになっても、驚きはない」と話す。米国では、当初独占販売していたAT&Tに加えて2011年2月からベライゾン・ワイヤレスが販売を開始、売り上げを伸ばしていることから、日本でもKDDIが「2社目」としてアイフォーンを手掛けても不思議ではないということだ。
さらに、ドコモが今後アイフォーンを発売する可能性も残っていると、遠藤氏はみる。ただし現時点で「ドコモにどれほどのメリットがあるかは疑問」と指摘する。韓国サムスン電子の「ギャラクシー」や英ソニー・エリクソンの「エクスペリア」といったアンドロイドモデルの売れ行きが好調で、「別にアイフォーンでなくてもいい、という利用者は意外に多い」(遠藤氏)というのが実情のようだ。今の状態が続けば、ドコモはアップルとの交渉を焦る必要はない。
アイフォーンを手に入れたとしても、KDDIにとって「バラ色」となるかは微妙だ。アップルは通信会社に対して、料金面などできつい条件を提示すると言われる。仮にKDDIが低い料金体系でアイフォーンを販売するとなれば、販売台数は伸びても「うまみ」は少なくなる。
米国では、AT&Tとベライゾンが相次いでパケット通信の定額制プラン廃止を打ち出した。国内でも、アイフォーンが売れれば売れるほどデータ通信量が増大し、通信会社への負担が大きくなって定額制を放棄するという事態に発展するかもしれない。