民間なら給料半減なのに…
次に、公務員制度改革では、民間並みの人事制度への改革ができるのかどうか。
かつて、福田康夫内閣時に与野党合意で成立した国家公務員制度改革基本法の考え方は、「民間並みの人事制度に改め、その代わり、労働基本権も付与」ということだった。ところが、菅内閣で提出された政府法案では、民間並みの人事制度への改革は置き去りに、労働基本権の付与だけを進めようという内容だ。
「民間並みにせず公務員は身分保障」という前提で考えているから、天下りに関しても、天下りをなくす以上、役所の中で幹部並みの待遇で処遇するポストを作らないといけないなどという発想も出てくる。
野田氏の『政権構想』には、まさにこの発想に基づく「高位スタッフ職の整備」というプランが出てくる。これは天下りは認めないが、窓際でも高給公務員にしておくというものだ。民間なら給料半減で嘱託かなんかのところを、「高位スタッフ」というのだから、公務員の自己保身はすさまじい。もし野田政権がこんなことを本気でやろうとしているなら、改革は期待できない。
余談だが、この『政権構想』の「高位スタッフ職の整備」という項目のところ、段落がずれていて、ワープロミスがある。よほど焦って挿入したようだ。窓際公務員をきちんと高給で処遇するという内容なので、国民にとってはそれほど緊急性はないが、官僚を大切にする野田総理には重要なことだったのだろう。
公務員制度改革に関連するが、経産省官房付の古賀茂明氏がとうとう辞めるようだ。古賀氏は、私らとともに「民間並みの人事制で労働基本権付与」の公務員制度改革を行ってきており、知識・経験ともに最適な人物である。しかし、野田政権が考えている公務員制度改革は「民間並みにせず公務員は身分保障」なので、古賀氏は不要ということなのだ。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2005年から総務大臣補佐官、06年からは内閣参事官(総理補佐官補)も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「財投改革の経済学」(東洋経済新報社)、「さらば財務省!」(講談社)など。