「毎日韓流ドラマばかりで、見れば見るほど寒気がする」――台湾の呉敦義・行政院長(日本の首相に相当)が2011年9月14日、「韓流」が氾濫する台湾テレビ界に苦言を呈したと台湾「聯合報」が報じた。
日本でも8月以降、「韓流偏重」への批判から何度もフジテレビなどへのデモが行われているが、台湾では政府首脳までもが懸念を示すほど「韓流」への危機感が強いようだ。
「韓流流しすぎ」で大手テレビ局に指導
台湾では2012年に地上波テレビ放送をアナログからデジタルに移行する予定だ。、呉行政院長の発言は「地デジ化」推進の立場から、今の台湾テレビ界、ことに台湾で高い人気を誇るケーブルテレビの番組内容が「陳腐過ぎる」と批判したものと見られる。
その中で呉行政院長が特に「韓流」を名指したのは、台湾のケーブルテレビが「韓流」に席巻されているという危機感が台湾に広がっているからだ。
台湾の政府機関「独立規制機関(NCC)」は2011年8月、大手ドラマ専門チャンネル「東森戯劇台」に対し、2012年4月までに総放送時間に占める韓流作品の割合を引き下げるよう指導した。
台湾ではケーブルテレビ網が極めて発達しており、その普及率は違法視聴も含めて8割、チャンネル数は100局近くに及ぶ。ところが過度の多チャンネル化の代償として、1チャンネルあたりの平均視聴率は1%を切る状態。多くの局が製作資金不足に悩まされている。
そこに進出してきたのが「韓流」だ。「有線広播電視法」では、総放送時間のうち最低20%は台湾製のコンテンツを放映するようケーブルテレビ局に求めているが、前述の「東森」では、放映されるドラマのほぼ100%が韓流ドラマとなっていた。「東森」以外にも同じような状況の局が少なくなく、1月には野党・民進党が国会でこの問題を追及している。
「自国番組」の制作に必要な補助求める声も
韓流の氾濫を食い止めるため、規制を強化しようという動きも出ている。
1月には民進党の林淑芬・立法委員が、自国製コンテンツの放映時間を最低20%から40%に引き上げるよう与野党に呼びかけた。韓流に限らず日本を含む海外コンテンツ全体が対象とはいえ、事実上韓流をターゲットにしたもの。韓国で開催されたアジア大会での台湾人選手失格で「嫌韓」ムードが高まっていた最中でもあり、「韓国を非難しながら韓流ドラマを観るのか」などと訴えたが、結局法改正にはいたらなかったようだ。
もっとも韓流を規制したとしても、それに代わる自国製コンテンツがなければ状況は変わらない、という意見も。国民党の陳淑慧・立法委員は呉行政院長の発言を受け、「政府は映画・テレビ会社に対して、必要な補助をすべき」と主張している。