90年代後半の「苦難の行軍」以来最悪
だが、状況はさらに悪化しそうだ。米政府系のラジオ局「自由アジア放送」(RFA)が11年9月14日に伝えたところによると、11年秋の収穫は、90年代後半の「苦難の行軍」以来、最悪のものになりそうだ。「苦難の行軍」とは、金日成が日本に対するパルチザン活動をしていた当時、100日にわたり強行軍を断行したことを指す言葉だ。90年代、食糧難が深刻化した時代に、「食べ物が無くても耐えろ」という意味でこの言葉が使われたという。
同局が消息筋の話として伝えたところによると、例年であれば9月上旬にはジャガイモの収穫が始まっているが、11年はまだ始まっておらず、内陸部の両江道(ヤンガンド)の農場では、「ツルは生い茂っているが、中身は少ない」状態だという。咸鏡北道(ハムギョンブクド)では、「肥料の供給が遅れ、十分育っていない」状態だ。
また、慈江道(チャガンド)、両江道(ヤンガンド)、咸鏡北道(ハムギョンブクド)では、作物が成長する7月にはほとんど雨が降らず、8月~9月末は降雨量が多く暑い日が続いたため、ツルの部分だけが大きく育ったという。
北朝鮮では、作物が大きく成長する6月から7月にかけては窒素肥料を、作物が熟す8月には尿素肥料を与えるのが、北朝鮮では一般的だという。だが、咸鏡北道では肥料の供給が遅れ、当局が8月になって地元農家の反対を押し切って窒素肥料を与えたという。このことが、さらに作物の成長を阻害している様子だ。
RFAによると、この消息筋は
「肥料が必要でない大豆は、例年よりも良い。それ以外は、まだ分からない。このまま10日ほど暑い日が続けば収穫ができるが、寒くなれば難しいだろう。今の作物状況からすれば、全体の収穫量は10年にはるかにおよばないだろう。『苦難の行軍』の再来も予想される」
と話しているという。