野田佳彦内閣が、基本的に原発の再稼働を認めていく方針を示す中で、電力各社による「ストレステスト(安全評価)」が動き出している。
関西電力と四国電力が9月中にも、1次評価の結果を経済産業省の原子力安全・保安院に提出する。東京電力も柏崎刈羽原発の1次評価に着手した。
「想定を超える地震や津波」の評価、問われる
ストレステストは今年7月、菅内閣が欧州の先例を参考に導入を決めた原発の安全評価方式。地震や津波に原発がどれだけ耐えられるか、コンピューターでシミュレーションする。定期検査で停止中の原発が1次評価、稼働中の原発が2次評価の対象となる。
1次評価は保安院の要請を受け、電力各社が実施するが、「これまでの想定を上回る地震や津波の規模」は必ずしも明確でなく、「プラントごとに各社の判断に委ねられている」(電力関係者)という。「安全神話を広めてきた電力会社が自ら行うテストなど信頼できるのか」との批判も一部にあるだけに、電力会社の説明責任が問われるのは間違いない。電力会社が1次評価の報告書を政府に提出すれば、「今の原発がどこまで想定外の地震や津波に耐えられるのか」をめぐり、報告書の内容だけでなく、その後の保安院や原子力安全委員会の審査自体も問われることになる。地元自治体や住民を巻き込み、議論を呼ぶのは必至だ。
政府はIAEAの評価も仰ぐ方針
関電はすでに美浜1号機など原発5基で、また四国電力も伊方原発3号機で一次評価を進めており、9月中の報告する意向だ。東京電力は今月から柏崎刈羽原発の1号機と7号機で評価を開始した。
東電は1次評価について「地震や津波等を起因として、重大な損傷に至る複数のシナリオを特定して安全の余裕を評価し、燃料損傷を回避するための措置と効果を提示する」としている。複数の異なる地震や津波を想定し、対策を講じるというものだ。
電力各社が政府に報告書を提出後、保安院と原子力安全委員会が妥当性を評価するわけだが、野田内閣は政府内だけでなく、国際原子力機関(IAEA)の再評価を仰ぐ方針を示している。
政府が再稼働の可否を判断するには、電力会社が1次評価の結果を提出後、2~3カ月はかかると見られており、IAEAの再評価が加われば、さらに時間を要すことになる。政府の最終判断を地元自治体が容認するかなど不確定要素が多く、原発再稼働の見通しは依然として不透明なままだ。