高知県室戸市が、「世界ジオパーク」に認定された。世界ジオパークは、地球の成り立ちを知るうえで貴重な地形や地質があり、教育や観光への活用が期待される地域を、ユネスコの支援で設立された国際組織「世界ジオパークネットワーク」(事務局・パリ)が認定しているもの。
新たな地域を認定する国際会議がノルウェーで開かれ、日本時間の2011年9月18日朝4時過ぎに認定された。
「大地形成のダイナミズムが実感できる」
そもそも、ジオパークとは地球活動によってできた重要で貴重な、あるいは美しい地質遺産がみられる自然公園という。ジオパークではそういった地質遺産や考古学、生態系、文化的な価値を保全し、地球科学の普及への利用と観光利用を通じて地域社会の活性化を目指している。「世界ジオパーク」は64の地域が認定されている(2010年3月末時点)。
高知県の東部の室戸半島にある「室戸ジオパーク」は、室戸市のほぼ全域を範囲とする。室戸市は、「かつての巨大地震の隆起によって形成された海成段丘や海岸地形などを見ることができ、大地形成のダイナミズムが実感できるはず」(ジオパーク推進課)と話す。また、日本最大崩落地の一つである「加奈木崩れ」などの地質遺産の価値はきわめて高いという。
温暖な気候で、四国八十八か所の巡礼地、日本最大級のレンズをもつ室戸岬灯台、かつての捕鯨などの伝統文化やホエールウォッチング、イルカによるセラピーが体験できる観光地でもある。最近は海洋深層水を中心とした産業でも話題だ。
世界ジオパークの認定に、室戸市は早朝から喜びに沸いている。「学術的に貴重な地形や地質、そこに生息する亜熱帯植物と海洋植物群落や魚介類などが、わたしたちの住む地域の成り立ちや生活に大きく関わってきました。そのことをわかりやすく伝えていきたいですし、多くの人に興味をもってもらうことで、国内外の交流の拡大につなげていきたい」(ジオパーク推進課)と、今後の経済効果にも期待している。
「洞爺湖有珠山」、「島原半島」など国内では5か所目
室戸市は、2010年末に世界ジオパークの認定を申請。今年7月に「世界ジオパークネットワーク」が現地視察を行い、9月18日の「認定」とつながったが、道のりは平坦ではなかった。「日本ジオパーク委員会による(世界ジオパークへの)国内審査がなかなか通らず、そこまで2年かかりました」と振り返る。
日本ジオパークは、現在20か所。アポイ岳(北海道)や南アルプス(中央構造線エリア)、恐竜渓谷ふくい勝山、隠岐、阿蘇、天草御所浦、霧島、伊豆大島などが認定されていて、いずれも自然豊かで地質学的にも貴重な地域だ。
このうち、1945年に誕生した昭和新山や活火山の有珠山を擁する「洞爺湖有珠山」や、1990年に噴火した雲仙・普賢岳などの「島原半島」、フォッサマグナの「糸魚川」、リアス式海岸に砂丘などの多彩な海岸地形を織り成す「山陰海岸」の4か所が「世界ジオパーク」の認定を受けている。