NHKがインターネットで番組を同時配信する構想を打ち出したことに、日本民間放送連盟(民放連)が「経費に受信料を使うのは反対」と異を唱えた。
これまでも、ネット配信については積極姿勢のNHKに対して、民放連は費用面や権利処理の観点から実現に難色を示し、意見が分かれていた。専門家からは「民放は利用者目線が欠如している」との指摘もある。
NHKの主張を「独りよがり」と批判
外部有識者による「NHK受信料制度等専門調査会」は2011年7月12日、報告書をNHK側に提出した。この調査会は、「フルデジタル時代」における受信料制度とその運用を検討してきたが、報告書にはネットによる同時配信に関する方向性を明らかにしている。
そこでは、NHKが公共放送としての役割を新たな時代で果たすうえで、ネットのような「伝統的な放送外の伝送路」の利用が不可欠とした。具体的な実現には、現行法の改正が必要との前提に立つものの、ネット同時配信が、パソコンや携帯端末といった「通信系端末」のみを利用する人にも社会参加を促し、「あまねく」情報を伝達する役割を一段進んだものにできる、という。
ネット同時配信を実現するための財源は、ひとつの考え方として受信料を挙げている。具体的には、既にテレビ受信機の設置に応じて受信料を支払っている視聴者とは別に、パソコンなどの通信端末でNHKを視聴する人を対象に加えるというものだ。
この報告書に対して民放連は9月15日、「見解」を発表した。NHKのネット同時配信の経費に「受信料収入を充てることには反対である」と意思表示したのだ。さらに、主にネット経由で情報を入手する若者層にもNHKの情報を届けなければ、NHKの役割を果たせないという主張は「独りよがり」の懸念があると指摘した。
受信料負担については、同時配信が実現した際に生じる恐れのある「相当なコスト負担」まで受信料全体で賄うのは「受益と負担の観点から、著しく適切さを欠くのではないか」と断じた。