チェルノブイリ事故でも新聞記事に「死の町」
「死の町」という言い方ではないが、住民がほかの土地へ移ったため無人化したという意味の「ゴーストタウン」という言葉は、東日本大震災の被災地や福島第1原発の周辺地域を指す表現としてたびたび、国会の委員会で使われている。例えば2011年4月5日の衆院総務委員会で、自民党の吉野正芳氏は出身地の福島県いわき市について、原発事故後「一時期ゴーストタウンになりました」と説明。また6月6日の参院決算委員会でも、新党改革の荒井広幸氏が、被災地となった宮城県仙台市の状況について「31か所、2100戸の住宅が大変な被害に遭って、そこにいるわけにいかないのでゴーストタウン化しているし……」と話した。いずれも現地の状況を示したもので、「住民感情を逆なでした」などと非難されることはなかった。
マスコミでも、1986年に起きたチェルノブイリ原発事故の報道で「死の町」という言葉を記事に載せている。事故の翌年に大手各紙は現地に記者を送ってルポを掲載しているが、原発近くにある地域を指して「人影ひとつ見当たらず、完全に『死の町』と化し」(毎日新聞)「約千人の作業員が15日交代で周辺の放射能汚染の除去作業などに当たっている『死の町』である」(読売新聞)と表現した。
鉢呂氏の場合、「死の町」のみならず、記者に向かって「放射能をうつす」といった趣旨の発言をしたことも伝えられたため、一連の不適切発言の責任をとる形で大臣の座を降りた。だが「死の町」という言い回しについては、新聞の投書欄やインターネットで「深刻な事実を率直に表現しただけではないか」という疑問や、「誰が死の町にしたのか」と原発事故そのものに対する責任を問う声もある。