枝野・前官房長官は「全面撤退のことだと共有」
一方、当時官房長官だった枝野幸男氏は、9月7日に行った読売新聞インタビューで、全面撤退説を主張。
枝野氏のところに清水社長(当時)から電話があり、直接話をした。「全面撤退のことだと(政府側の)全員が共有している。そういう言い方だった」。東電は、なぜかこの読売記事には反論コメントを出していない。
菅氏も退陣前後のマスコミとのインタビューで、東電が撤退の意向を示していると伝えられた、と明かしている。
どちらが本当なのだろうか。
経産省の原子力安全・保安院の広報担当によると、全面撤退説が正しいのか間違いなのかは、保安院としては「確認できていないこと」だ。どうも政府側の全面撤退説は、「政治主導」の領域のようだ。
東電広報によると、3月15日、「直接事故収束にあたる」約70人のみを残し、あとは近くの福島第2原発などへ一時退避した。菅氏や枝野氏らが東電の清水氏と「撤退」をめぐる会話を交わしたのは3月15日の未明だ。結局、少なくとも一部の撤退は実行されたわけだ。
震災発生時には、福島第1原発に約6400人がいたことが分かっているが、「一部退避」の前日、3月14日時点で何人が残っていたかは不明という。17日までには、300人近くが現場へ戻り、計約350人に増えている。以降も順次増員された。
理屈の上では、(1)東電は当初、全面撤退を打診したが、菅氏から叱責を受け70人を残した、(2)当初から東電は70人程度を残し、あとの人員を一時撤退させる方針を打診したが、政府側から「それでは少なすぎ、事実上全面撤退だ」と受け止められた、といった可能性が考えられる。
そもそも、関係者らが詰めた議論をせず、雰囲気だけで「全面撤退」の言葉が独り歩きして混乱が広がった、ということもありそうだ。