証券最大手の野村ホールデイングスの株価と2位の大和証券グループ本社の株価が2011年9月6日の東京株式市場で逆転し、その日の終値は野村291円、大和293円になった。8日終値は両社とも298円、週末9日の終値は野村299円、大和298円とほぼ並んでいる。
1960~70年代は株価のデータを両社、東証も持たないため検証しにくいが、ともに1961年10月に上場して以来、「野村が下」となるのは初めてとみられる。市況低迷でどちらも経営環境は厳しいが、4~6月期連結決算は野村が177億円の最終黒字に対し、大和は94億円の最終赤字と、業績は大和の方が厳しいのだが、一体何が起きているのか。
時価総額でみると大和は半分以下
両社の株価の差は7月ごろから、20~30円程度にまで接近する日もあり、「逆転もいずれ来そうだ」とみられていたが、実際に逆転してみると「いやー本当に行っちゃったねー。なんでなんだろ」(SMBC日興証券の中堅社員)などと、兜町の話題を独占した。
ただ、「時価総額ではうちがはるかに上なんだし、逆転と言われてもねえ」(野村の若手社員)との声が聞かれるように、企業価値そのものが逆転したわけではない。9日時点の時価総額は野村の1兆1429億円に対し、大和は半分以下の5213億円にとどまる。
とはいえ、上場以来、一定の株価の差を持ってバブルに向かって上昇し(上場来高値は1987年に野村が5990円、大和が3980円)、現在に向かって下降する同じような推移をたどってきた両社だ。年初(1月4日の終値)でも野村524円に対し大和が426円と98円開いていただけに、株価逆転は自然な流れとは言い難い。
投資ファンドの「買い支え」が投資家に一定の安心感
直接の大きな材料は米国時間の2日、米連邦住宅金融局(FHFA)が、野村を含む大手金融機関17社に対し、住宅ローン担保証券(MBS)関連で損害賠償訴訟を起こしたことだ。FHFAは経営破綻したファニーメイ(米連邦住宅抵当公社)とフレディマック(米連邦住宅貸付抵当公社)の監督機関で、野村などが両公社にMBSを販売するリスクを十分に説明しない過失があったというもの。野村は20億ドル超(約1600億円)を販売しており、訴訟リスクから売りが先行した。
「世界的に業務を展開する野村は、欧州の金融不安 などの業績への影響がより懸念された」(大和幹部)との見方も、そこそこの説得力はある。
一方、大和が持ちこたえた理由として挙げられているのが、筆頭株主の米シカゴの投資ファンド、ハリス・アソシエイツの存在だ。大量保有報告書で2007年8月に初めてその名が登場。市場内で少しずつ買い増すペースを11年に入って上げており、8月5日提出の報告書では13.44%まで保有比率を上げている。
「資産運用」を目的とするハリスの「買い支え」が投資家に一定の安心感を生んでいるだけでなく、「再編が近いのでは」との思惑も呼び、株価下落のカーブを野村より緩やかにした面もあるようだ。
9月13日の両社の株価は、野村が前日比10円高の296円、大和が同8円高の297円だった。