「限りなく自民党に近い」野田政権 政策決定システムが似てきた

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   野田佳彦政権発足に伴い、政府・与党の政策決定の仕組みが見えてきた。政調幹部会を新設し、政策の事前承認権を持たせ、党税制調査会も復活、さらに経済関連で乱立している政府の会議を集約して新たな「司令塔」を設ける――のが柱だ。

   全体として、「政治主導」「族議員排除」を掲げてきた民主党政権の看板は脇に追いやられ、実質的に自民党政権時代の仕組みに「限りなく近い」(与党議員)形になる。

閣議決定前に党の事前承認を受ける

   自民党時代の政策決定システムは、党の政務調査会の各部会から政調に上げて、党幹部や有力議員約30人で構成する総務会で承認するというもの。政府提出法案、予算案、条約案は、党の事前審査・承認が必要だった。

   民主党の鳩山由紀夫、菅直人の2代の政権は、脱官僚依存、政治主導、族議員排除を掲げた。「族議員と省庁の役人が一体となって政策決定をゆがめる」として、「政・官・業の癒着」を批判。族議員排除を錦の御旗に政策決定の内閣一元化進め、各省庁の政務3役による決定システムを取った。菅政権で党政策調査会を復活したが、意見を聞く場にとどめた。政調会長が国家戦略相として閣内に入ることで党側の意向を反映する形にしたが、党による「事前審査・承認」は排除した。

ねじれ国会、野党に配慮

   野田政権の新システムは、法案などの閣議決定前に党の事前承認を受けることになる。政調会の下部の「部門会議」「プロジェクトチーム」を経て、政調会長や代行、代理ら幹部5人で構成する「政調幹部会」での了承を得た上で、政調会長に幹事長、幹事長代行、国会対策委員長を加え、首相、官房長官と計6人による「政府・民主三役会議」を新設し、ここの承認を必要とするとした。

   自民党政権時代を「権力の二重構造」と批判してきただけに、自民党から「あの批判は何だったのか」(町村信孝・元官房長官)と皮肉る声が出ているが、こうした仕組みは、参院で野党多数のねじれ国会で、与野党協議にあたる政調に重きを置く体制が必要との判断だ。それは人事面にも現れ、政調会長に前原誠司元外相、代行に仙谷由人前官房副長官と、野党側とのパイプが太い重量級を充てた。前原氏は自民党の石破茂政調会長と、仙谷氏は大島理森副総裁、公明党の井上義久幹事長らと親しい。

菅政権の失敗のテツは踏まない

   党税調は、やはり政策決定の内閣一元化のかけ声の下、2009年の政権交代後、廃止されていた。今回の復活では、藤井裕久元財務相が会長に起用されたほか、政府税制調査会担当の五十嵐文彦副財務相が再任された。党内の増税慎重論ににらみを利かせ、大震災の復興財源確保に向けた10兆円超の臨時増税や、税と社会保障の一体改革に伴う消費税増税を「着実に進める布陣」(民主党議員)といえそうだ。

   民主党政権の経済政策は、「国家戦略室」を設け、政治主導確立法を制定して「局」に格上げし、そこを司令塔に予算編成などを主導するはずだった。しかし、ねじれ国会もあって頓挫し、菅政権では新成長戦略実現会議、社会保障改革検討本部などテーマごとに約10の「会議」が林立。非効率な中で政府と党の意見が対立し、政策決定が滞る場面も目立った。

   この反省に立って、野田首相は6日、古川元久経済財政担当相に対し、既存組織の整理を指示した。具体的に検討されているのが「国家戦略会議」(仮称)。法的裏付けがある「経済財政諮問会議」を器として活用するのが有力で、首相就任前の1日に経済団体を訪ねた際にも、米倉弘昌経団連会長に会議への参加を要請している。

民主党議員は泥臭く、汗をかくことができるか

   新司令塔は、自民党時代の「政治主導」の道具だった。今回、民主党の政策事前承認制という自民党時代と同じ仕組みにするのに対応し、諮問会議を実質的に復活し、「政府と党が二人三脚で政策決定を円滑に進める」(経済官庁幹部)という狙いと言われ、全体に政策決定の仕組みは自民党政権時代に回帰する形になる。

   ただ、かけ声ばかりが美しいのが民主党流。前原氏は国交相として「地元に説明する前にかっこよく八ツ場ダム中止を打ち出し、混乱させた」(自民党筋)といわれるように、これまでの民主党政権は「関係者の間を走り回って調整することが出来ない」(大手紙政治部デスク)のが特徴だった。調整を進めるには官僚を使いこなす必要もある。与党政治家が、まさにドジョウのように泥臭く、汗をかけるかが野田政権の成否を左右しそうだ。

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