国内でスマートフォンの普及が進むなか、独自の工夫を凝らした「格安モデル」を武器に「スマホ戦争」に名乗りを上げるベンチャーが出てきた。
スマートフォンを扱う通信会社は多くの場合、利用者と2年契約を結ぶことで端末料金を割り引いている。
インターネット網使った「モバイルIPフォン」
例えばソフトバンクモバイルが販売する米アップルの「アイフォーン(iPhone)4」は、16ギガモデルの端末代は月々480円だ。これに通話料やデータ通信を合わせると、毎月の支払いは安ければ6000円台が目安となる。
これに対して、破格の値段でスマートフォンを提供する事業者がある。日本通信だ。自前の通信網を持たず、NTTドコモの3G回線を借りて「bモバイル」の名称でデータ通信事業を手掛けている。2011年1月に発売したスマートフォン「イデオス(IDEOS)」は、通話料とデータ通信料を合わせて「月額3000円」をうたう。中国メーカー「華為技術」の製造モデルを採用し、基本ソフト(OS)は米グーグルが開発した「アンドロイド」を搭載している。
セールスポイントは通話料の安さだ。「イデオス」はインターネットを利用した「IP電話網」を使って通話する。基本料490円で、それ以後は相手が固定、携帯電話を問わず30秒10円と、他社の半額に抑えて差別化を図った。
ただし、通信速度は上り、下りとも最大で300kbps程度にとどまる。動画コンテンツをスムーズに閲覧するには苦しいスピードだ。単純に比較はできないが、MMD研究所が2011年9月5日に発表した3G回線スピードの調査結果を見ると、「アイフォーン4」は東京・新宿駅東口で上り1165kbps、下り2186kbps、KDDIの「アクオスフォン」は同地点で上り1819kbps、下り3056kbpsを計測している。多少の違いはあるが、他の観測地点でも数値は似たり寄ったりで、「イデオス」より速い。
とはいえ、大手キャリアの半額程度でスマートフォンが使えるのは魅力が大きい。容量の大きいデータをやり取りしないと割り切るような使い方をすれば、「費用対効果」は十分望めそうだ。
「テザリング」でも追加料金とらない
少々「風変り」なのが、イー・モバイルの「Pocket WiFi S」だ。この端末は、ノートパソコンをはじめ無線LANに対応する機器を外に持ち出した際に、アクセスポイントが近くにない場合でも3G回線につないでネットに接続させるための「ポケットルーター」なのだが、同時にアンドロイドOSを搭載しているためスマートフォンとしても使えるのだ。
モバイル端末を「親機」として、「子機」であるパソコンや携帯端末などをネット接続させることを「テザリング」と呼ぶが、最近はテザリング可能なスマートフォンが増えてきた。例えばNTTドコモでは、NECカシオ製の「メディアWP」や「エクスペリア・レイ」(英ソニー・エリクソン製)など複数のテザリング対応モデルを出したが、この機能を使った場合データ通信料が月額1万円を超える料金プランとなるため、通常の「パケット定額制」に比べてかなり高額だ。
これに対して「Pocket WiFi S」は、テザリング機能を利用しても追加料金はかからない。2年契約を基本に、データ通信とテザリング、通話を定額にして月額4980円に抑えている。
使い道や料金面でユニークな「イデオス」や「Pocket WiFi S」は、機能や洗練されたデザイン、「軽さ」といったハード面で優れた大手各社の最新スマートフォンとは違った角度から、消費者にアピールする。