JT株の売却と「財務省支配」脱却
ここで障害になるのが、JT株式を財務省が保有していることとタバコ産業の所管が財務省であることだ。世界の流れは財務省に不利であるが、株主かつタバコ業を所管する財務省にとってJTは有力な天下り先なので防戦に必死だ。今でもJT役員に、涌井洋治会長、武田宗高副社長、立石久雄監査役と3名も天下りしている。
政府が保有するJT株の時価総額は1.7兆円。復興財源との関係でも、売却代金を復興財源とする考え方もでている。
財務省はJT株を売却されタバコ業の所管でなくなると天下りができなくなる。そうなると困る財務省が早速動き出した。財務省出身の秘書官などを使って、官房長官や蓮舫行革大臣から小宮山厚労相批判がでてきた。財務省は、総理の他にも、官房長官、行革担当相へも秘書官を派遣しているので、財務省ネットワークが動き出したことがわかるのだ。
ただ、面白いのはJTがこの機会に政府株の完全売却を目論み財務省支配から脱しようとしていることだ。
小宮山厚労相のタバコ発言の裏で、JT株の売却という復興財源話と平行して、タバコ産業の所管を巡る財務省と厚労省の争い、財務省から天下り支配を脱しようとするJTが動いている。下手な小説よりはるかに面白い。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2005年から総務大臣補佐官、06年からは内閣参事官(総理補佐官補)も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「財投改革の経済学」(東洋経済新報社)、「さらば財務省!」(講談社)など。