ガレキの上で得た財産―ボランティア考現学【岩手・大槌発】

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被災現場で汗を流す学生たち=大槌町吉里吉里地区で
被災現場で汗を流す学生たち=大槌町吉里吉里地区で

(4日大槌発=ゆいっこ花巻;増子義久)

   「あっ、診察券が…」「こっちからは怪獣アニメのDVDが出てきた」…。黙々と作業を続けるボランティアの間から時折、声にならない声が漏れる。壊滅的な被害を受けた大槌町の被災現場には連日、全国からやってきたボランティアの姿が絶えない。大震災からやがて半年―。気が遠くなるような瓦礫(がれき)撤去の作業はもはやボランティアの協力なしには前には進まない。


   4日、吉里吉里地区の現場では札幌大学の学生ら20数人が大粒の汗を流していた。海水をかぶった民家の表土を削り取る作業などに従事し、日程は4泊5日。礎石だけを残した表土の下からは生活の息遣いを伝える品々が次々に掘り出される。「テレビの映像では知っていたが、実際に現場に立ってみると感覚が全く違う。アニメのDVDを見つけた時はショックだった。これを見ていた子はどうなったんだろうか。そう思うと胸がいっぱいになって…」。経営学部2年の吉田幸平君(19)はこう言って、DVDの汚れを手でふき取った。


   現場で指揮をとる人がいた。宇都宮市出身の古橋正義さん(36)。花巻市の私立大学を卒業後15年間、岩手県内で働き、3年前に故郷に戻った。「岩手は自分を育ててくれた土地。大震災の報に接し、後先を考えずにボランティアを志願した」と古橋さん。6月末に勤め先に退職届を出し、今は廃校になった県立宮古高校川井分校(キャンパス)のボランティア宿泊施設から被災現場に通う日々だ。


   「取りあえずは半年間の予定です。あの時、あれこれ考えていたら結局はここにいなかったような気がします。自分にとっては逆に考える余裕を与えないほどの衝撃だったということです。この現場に立つことがなかったら、おそらく将来に悔いを残したと思います」。古橋さんは玉のような汗を流しながら、ぼそっとつぶやいた。


   川井キャンパスには常時、数十人のボランティアが滞在している。団体以外にもふらりと個人で立ち寄る人も。しょせんは通りすがりのボランティアに過ぎないかも知れない。「でも、現場で感じることって、とても大事なこと。来てよかった」と文化学部の小野寺夏生君(21)はこう言って、言葉を継いだ。「僕にとっては瓦礫の上で感じた気持ちはかけがえのない大切な財産になるような予感がします」



ゆいっこ
ゆいっこネットワークは民間有志による復興支援団体です。被災地の方を受け入れる内陸部の後方支援グループとして、救援物資提供やボランティア団体のコーディネート、内陸避難者の方のフォロー、被災地でのボランティア活動、復興会議の支援など、行政を補完する役割を担っております。
ゆいっこは、「花巻」「盛岡」「北上」「横浜」「大槌」の各拠点が独立した団体として運営しておりますが、各拠点の連携はネットワークとして活用しております。
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