原発事故による海洋汚染で、各国から数百兆円レベルの賠償を請求される――。テレビやブログで識者らがこんな内容の発言をして、論議になっている。
福島第1原発の事故では、高濃度の放射性物質が海洋に漏れ、さらに政府が原発にたまった大量の低濃度汚染水を放出する事態になった。しかし、その後、海洋汚染がどこまで進んだのかは、あまり報じられていない。
「日本を救うためにも東電破綻を急ぐべき」
それが、識者らの発言によると、環太平洋の各国を中心に、国際的な懸念と責任追及の声が高まっているというのだ。
金融アナリストの脇田栄一さんが、こうした発言を自らのブログで2011年9月4日に紹介し、ネット上で反響を呼んでいる。
ブログではまず、ジャーナリストの上杉隆さんがテレビや勉強会で発言したことが挙げられている。上杉さんは、震災で20兆円の復興需要があるとの楽観的な見通しをけん制。各国が日本に海洋汚染による巨額の国際賠償を求めるとの取材内容を報告していた。
それによると、日本を除く環太平洋の20か国が5月に、事故後の「4か年プラン」を立てる会議を設置した。表向きの理由は、海洋の放射能調査だが、実態は、4年後に海産物などによる放射性物質の体内濃縮が分かったときに備えたものだという。そして、日本に対し、国連海洋法条約やロンドン議定書の違反行為で1か国当たり20兆円以上の賠償を求める準備をしているとしている。
その結果が、数百兆円レベルの国際賠償ということだ。
ブログではさらに、巨額賠償に備え、慶大大学院教授の岸博幸さんによる日本の「現実的な対処法」を紹介している。岸さんは、ダイヤモンド・オンラインの2日付コラムで、数百兆円賠償の指摘もあることを前提に、日本政府は東京電力を破綻処理すべきだと説く。それは、国が東電の後押しをしているので、各国にとってはつけ込みやすいとみられるからだ。
脇田さんも、これらの発言を支持し、「日本を救うためにも、東電破綻を急がなくてはならない」と指摘している。