一川防衛相「素人だから文民統制」発言 「中国、北朝鮮から隙突かれる」と批判

建築予定地やご希望の地域の工務店へ一括無料資料請求

   一川保夫・防衛相(69)の「(私は)素人だが、これが本当のシビリアンコントロール(文民統制)だ」という発言が波紋を呼んでいる。自民党からは「解任に値する」と反発の声があがり、識者からは「中国や北朝鮮などから隙を突かれる」との指摘も出ている。

   「そのひと言だけで解任に値する」。一川発言を受け、自民党の石破茂・政調会長(元防衛相)はこう反発した。2011年9月2日、一川氏が閣僚呼び込み前に記者団に「素人」発言をしたことを受け、即座に国会で追及していく考えを示した。

自民・山本参院政審会長「一刻も早く辞めて頂きたい」

一川防衛相発言は、尾を引くのか。
一川防衛相発言は、尾を引くのか。

   一川防衛相は9月2日夜、「素人」発言について、「ほとんどの国民は(安全保障政策には)素人。専門家でなく国民目線で国民が安心できる政策が大事だ」という趣旨だったと記者団に釈明した。

   しかし、批判は収まらず、3日のTBS系情報番組に出た自民党の山本一太・参院政審会長も「一刻も早く辞めて頂きたい」「こんな気持ちの人に日本の防衛を任せられるのか」と責め立てた。

   また、元外務省主任分析官で作家の佐藤優さんは、3日のブログ「佐藤優の眼光紙背」で、一川発言について、「国防・安全保障に対する基本認識を示すものなので、実に深刻な失言だ」と指摘した。理由について、中国やロシア、北朝鮮、韓国が「自らが素人と公言する防衛相が就任した隙を突いて自国の権益を拡大しようとするからだ」と説明した。

   佐藤氏によれば、防衛相に必要なのは「国防哲学」であり、「国民目線」で判断しては、結果として国家と国民を守ることができなくなる。ただ、この件を政争の具にする余裕はないとも指摘し、「国民が一丸となって政治家を強化していく」必要性も訴えている。

   元航空幕僚長で「ほんとうは強い日本」(PHP新書)などの著書がある田母神俊雄氏に聞いてみると、「問題視するような大した発言ではない」との答えが返ってきた。

歴代防衛大臣は「みんな素人みたいなもの」?

   野田新内閣のうち、「素人大臣」は一川氏だけではないし、自民党時代を含めた歴代防衛大臣をみても「素人大臣」は多かったという。「本人は詳しいつもりの人もいたようですが、みんな素人みたいなものでした」(田母神氏)。

   もっとも、「素人が統制するのが本当のシビリアンコントロールだ」という一川発言自体については、「間違いだ」と釘を刺す。「政治家が実力組織たる自衛隊や軍隊を統制する」「軍事より政治が優先する」というのが文民統制の考え方だ。防衛相が素人か専門家か、が問題なのではない。

   田母神氏によると、防衛相は周りの専門家の意見に耳を傾けることができるか、そして意見を聞いた上で政治家として的確な判断ができるかどうか、が問われるべきだ。

   「自民党も、こんな発言を問題視するのではなく、もっと高いレベルの政策的な議論を戦わせてほしい」と田母神氏は注文をつけた。

   一川防衛相は小沢一郎・元代表のグループで、野田佳彦首相による「党内融和」人事の一環で入閣した形だ。農林水産省出身で、県議を経て衆院議員3期も務めている。現在は参院へ鞍替えして1期目だ。党務や国会の所属委員会の経歴をみると、国会対策委や農水関連が目につくが、参院の外交防衛委員会の理事を務めたこともある。

姉妹サイト