福島県内で採れた野生キノコから高濃度の放射性セシウムが検出されたことを受け、農林水産省は原子力災害対策特別措置法に基づく出荷停止などの措置を検討している。措置が決まれば入山が止められ、マツタケを含むキノコの収穫が禁止される。
国の基準の1キロあたり500ベクレルを超えたのはチチタケ。県は9月3日、古殿町で3200ベクレル、棚倉町で2万8000ベクレルが検出されたと発表した。市場に流通はしていない。
両町は福島第一原発から50キロ以上離れていて空間放射線量は突出した値を示していないことなどから、セシウムは腐葉土などから吸収され、キノコの体内で濃縮されたものとみられる。県は、両町や出荷業者に、木や植物と共生して養分を吸い上げる「菌根菌」類キノコの採取と出荷の自粛を要請した。
汚染濃度が高いため、農水省と県は両町周辺での検査を強化する。さらに、出荷と摂取の禁止に踏み切る方針で、菌根菌類全体が対象になる。マツタケ、ホンシメジ、コウタケなどが含まれる。
こうした動きを受けて、棚倉町は4日、町民に注意を呼び掛けるチラシの配布を始めた。チチタケ、マツタケなど菌根菌類の野生キノコを出荷・摂取しないよう求めている。
福島県の山間部では、総じて町の中や平野部より高い放射線量が測定されている。今後、森林の除染が大きな課題となるのは避けられない。警戒区域・緊急時避難準備区域に指定されている川内村など3地点で、森林の放射能汚染の実態調査が行われている。10月にも、樹木の部位ごとの放射線量の分析結果が判明する見通しだという。