日本の社長の名前で最も多いのは「誠」であることが、企業情報の東京商工リサーチの調べでわかった。「誠」が1万96社。次いで「博」の9428社、3位が「茂」の9190社と続き、上位はどれも漢字1文字の名前だった。
一方、社長の姓は「佐藤」(3万1910社)、「鈴木」(3万817社)、「田中」(2万4427社)が「御三家」と呼ばれ、2008年の調査と変わらず上位を占めた。姓名では、「佐藤誠」と「鈴木茂」がともに163社で最多だった。
「個」への意識の高まりが「漢字1字」に
社長の名前調査は、東京商工リサーチの企業データベースから約233万件の代表データ(個人企業を含む)を抽出し、社長の姓名と読みがなを2011年7月現在で集計した。
名前の第1位「誠」に2位の「博」、3位「茂」と、「漢字1文字」が多い理由について、同社はこう分析する。
男性の名前は、戦後~高度経済成長期に「誠」や「博」「隆」「修」「茂」などが人気。現在、日本の社長の多くは50~60歳代で、戦後に名づけられた「誠」や「博」が増えていったときに生まれた世代にあたり、当時人気のあった名前が社長の名前ランキングでも上位にあるとみている。調査担当者は、「『郎』や『夫』を使った名前が少なくなったのは意外だった」と漏らす。
「著名人名づけ事典」(文春新書)の著者の矢島裕紀彦さんは、「漢字1字」が増えていることについて、「一字名は昭和10年ごろから目立ちはじめていました。戦前・戦中は父祖から1字、長男ならばそれに『一』を加えるといった名前が多かったが、それが徐々に個々の子どもにふさわしい名づけをしたいという『個』への意識が高まってきた。その現れでしょう」と分析する。
「戦争で相手を打ち負かすよりも、大きく広く知に通じる『博』、人間として誠実であることの『誠』、すぐれて豊かに繁栄する『茂』と、そういうものに重きをおいていきて生きたいという価値観の変化が如実に現れています」とも指摘する。