プロ野球・横浜ベイスターズの売却先候補に、ソーシャルゲーム最大手で「モバゲー(Mobage)」を運営するディー・エヌ・エー(DeNA)が挙がっているのだという。ネットでは早くも「モバゲーベイスターズ」「DeNAベイスターズ」などといった球団名が語られている。
プロ野球球団のオーナーといえば、時代を代表する企業が担ってきた。IT業界関連企業では既にソフトバンクと楽天が球団を経営している。プロ野球はIT企業オーナー全盛時代が来るのだろうか。
「どこの馬の骨だ!?」と言われたホリエモン時代
報道などによると、プロ野球横浜ベイスターズの譲渡先の有力候補に挙がっているのがDeNAと旅行会社のH.I.S.。ベイスターズは毎年20数億円の赤字が出ていて、2010年まで3年連続最下位。オーナーのTBSホールディングス自身も広告収入の落ち込みで赤字に転落したため売却先を探していた。10年は住宅設備大手の住生活グループ(現LIXIL)や家電量販店ノジマと売却交渉を進めたものの決裂した。
プロ野球球団のオーナーになるには他球団オーナーの了承が必要で、04年のホリエモンの近鉄買収では巨人・渡辺恒雄球団会長から「どこの馬の骨だ!?」などと反対にあった、という。サンケイスポーツ(2011年9月2日)によれば、DeNAとH.I.S.について、
「本格的に調べてはいないが、ギリギリだな」
と「承認」したと書いている。
それにしてもなぜ「モバゲー」のDeNAがベイスターズの売却先候補なのだろうか。
一つに高い収益を誇る優良企業だということがあげられる。11年3月期の売上高は前期比34%増の約1120億円で本業の利益を表す経常利益が同61%増の約562億円。事実上無借金経営で純資産は11年6月期末時点で875億円。預金も509億円ある。昨年のベイスターズの売却費は100億円だったとされ、これだと楽々購入は可能だ。さらに、DeNAの今年度の広告予算は200億円といわれ、その一部でベイスターズの年間赤字は埋まる。
「買収するなどというという事実はありません」
ITジャーナリストの井上トシユキさんによると、DeNAに白羽の矢が立ったのが本当だとすれば、良好な経営だけが要因ではないという。まず、プロ野球球団のIT業界に対する意識が変わってきた。IT業界が産業としての地位が向上したことに加え、ソフトバンク、楽天に経営を任せた結果、赤字に陥ることなく業績を伸ばせることが実証された。
そしてDeNAの創業者、南場智子さんの存在が大きいという。
南場さんはコンサルタント会社マッキンゼーに入社した後、留学しハーバードでMBAを取得。その後マッキンゼーの役員を経てDeNAを設立した。また、内閣IT戦略本部員に就任といった経歴を持つ。
「南場さんは財界人の知り合いが多いんですよ。モバゲーで遊んだことのない経営者でも南場さんは知っていたりします。ベイスターズの売却先を探したときに、財界のお墨付きがある人だと南場さんが紹介された、という可能性もあります」
と分析している。
DeNAは本当にベイスターズのオーナーになるのだろうか。同社広報は、
「報道にあるようなベイスターズを買収するなどというという事実はありません」
ということだった。